イー・ウーマン（ewoman）

小さな習慣変化・行動変化（ひさぼん・東京都・54）

教訓とまではいきませんが、習慣となったことはあります。ひとつは防災習慣。アメリカ同時多発テロ911と東日本大震災311は、防災・避難グッズの入替えや、集合場所確認などをする日に。ふたつめは、寄付の習慣。東日本大震災時、毎日テレビから流れて来る被災地の状況に胸をえぐられ、偽善でもないよりましと、ボランティアでがれき集めに参加したものの、結局自分が遠くから継続してできる支援は寄付くらいと思い、寄付やクラウドファンディングなどで支援参加することが習慣になりました。

持ち歩くものが変わりました（まうやん・東京都・49）

まず、生活は一変したかと思います。私は当時も今も東京在住ですが、蛍光灯はLEDとなり、避難所や避難道具の情報は街や公園にしっかりと。そして日々持ち歩いているのはLEDのミニ懐中電灯とホイッスルにマイボトル、そして重いけれどモバイルバッテリー。先の北海道の大地震の時に私は出張で旭川におり被災しましたが、いつも持ち歩いている懐中電灯とモバイルバッテリーが何より役立ちました。それから、電子マネーはダメでした。現金は必携ですね。

原発の存在は不安（hiro2・62）

阪神大震災で震度７を経験しているので、水と最低限の食料はローリングストックで、カセットコンロや電池の常備、風呂の水はためておくという個人でできることは備えているのでYESを選びましたが、東日本大震災での災害は地震に加えて津波と原発のショックが大きく、特に原発は稼働させない、という選択肢で災害を防ぐことができるのに政府がその選択をしないことが不安でしかたありません。

備蓄品の定期チェック（DiamondBar・東京都・52）

防災グッズや避難用のリュックサックは毎年1回点検しています。飲料水も一定量を備蓄して、何日間か電気や水道が止まっても大丈夫なようにしています。とはいえ、実際に電気や水道を使わずに生活してみるということはしていないので、いざとなったときに十分かどうかという不安も残ります。巣ごもり生活の中で不用品を処分して部屋の中を整理したのも、ものが倒れたりということを防ぐのに少しは役立つかなとも思っています。

個人的には常に備えている（nekosaurus・愛知県・51）

幼い頃から「東海大地震がいつかくる」と言われ続けてきたので、震災に備える意識は常にあります。そして、東日本大震災、その前の阪神淡路大震災の被害を目の当たりにして、より具体的に備えるようになりました。ただそれは、個人的なレベルに過ぎず、地域や社会、国レベルでどこまで共有できているのかは判りません。

物は備えてはいるけれど……（きまこ・埼玉県・51）

震災後、当時に起きた物不足や、自分や家族がコロナに感染、もしくは濃厚接触者になった場合も考慮して、食料品や消耗品を備蓄しています。また発電機や家族の人数分の緊急時持ち出し袋なども用意してあるのですが、家族間の意識は薄く、集合場所や備蓄品の配置・管理など、肝心なことが何も共有出来ていないことに気づきました。大事な点を見落としていたので「NO」だと思います。

都心のマンションで危機感希薄（YOHEI・東京都・36）

都心の新しめのマンションに住んでいるのですが、正直、どれほど大きな地震が来ても、室内にいれば安心という感じです。非常食など、あまり買い込んでも保管や処分をするのが大変となった経験もあるので、十分備えていないのが現状です。災害時のバッテリーは備えました。

災害対策格差は？（地球交響曲・大阪府・43）

対処をする事が出来るところと、出来ないところが、公共の場や個人でもかなりの差があるのではないかと。生き残った際に使えるグッズをと準備はしていますが、自分の住まいからしても傷んだら応急措置をするといった感じで、費用面に余裕がなければ大元の建物が壊れたら駄目だよなと諦めモードになってしまっています。すべての面での災害対策格差みたいなものがどの程度あるのか、改めて情報としても知る事が出来たら良いなと思いました。

国家としての対策と長期ビジョン（Piwo・38）

個人や自治体における防災グッズ、備蓄などの備えは浸透し教訓が生かせています。住宅やビル等への建築・耐震基準も厳しくなり、脱原発で風力・太陽光発電など増えました。ただ、風力・太陽光発電が増えたことによる自然や生態系への影響はどうでしょう。再稼働した原発の安全性、廃棄物の管理、まだまだ課題は山積みです。地震大国日本、もちろん耐震は重大ですが日本全体そして将来を見据えて何が大事で、どう取り組んでいくか、そこまで考え抜いての国としての対策が必要だと感じています。

議論に蓋をしている気がします（blueberry53・大阪府・64）

震災による原発事故以降、原発の議論が思考停止しているように感じます。既設原発の安全対策は充実しても、その社会的評価は止まったままのように思います。逆に、再稼働しなくてもエネルギー・温暖化問題も安心という風潮もある気もします。もし必要性を認めるなら、より安全な新しいタイプを目指す努力がなされているのでしょうか。議論に蓋をし、再生可能エネルギーという言葉だけに明るい未来を感じようとしているのではないでしょうか。真の合意形成を目指す必要性を政治にも国民にも感じます。

東日本大震災の教訓を生かしているかどうか、いまのところYESの回答が約3分の２です。NOの回答も含め、みなさん、自分の身の回りでは、それなりの対策をしているようですが、国の対策については不安を持っているというコメントが多いようです。
 
「まうやん」さんは「LEDのミニ懐中電灯とホイッスルにマイボトル、そして重いけれどモバイルバッテリー」、「hiro2」さんは「水と最低限の食料はローリングストックで、カセットコンロや電池の常備、風呂の水はためておく」、「きまこ」さんは「発電機や家族の人数分の緊急時持ち出し袋」、「YOHEI」さんは「災害時のバッテリー」など、みなさん震災など非常時への備えは整えていますね。
 
「ひさぼん」さんは9.11と3.11の年2回、「DiamondBar」さんは年1回、防災・避難グッズやリュックの点検をしているとのこと、ほかのみなさんも防災訓練への参加や避難路の確認などアップデートも抜かりがないようです。「きまこ」さんは「家族間の意識は薄く、集合場所や備蓄品の配置・管理など、肝心なことが何も共有出来ていないことに気づきました」と反省されていましたが、それを発見できたことは防災につながります。「ひさぼん」さんは「寄付やクラウドファンディングなどで支援参加することが習慣」になったとのこと、すばらしいことですね。
 
震災時に仙台に住んでいた私は、下水道や電気が止まった経験から、東京に移ってからも風呂の水は貯め、卓上コンロのボンベ、携帯電話用の電池は備えるようにしています。ボランティアとしては、被災地の子どもたちをケアするNPO（東日本大震災こども未来基金とテイラー・アンダーソン記念基金）の活動を続けています。支援をはじめたときに小学生だったこどもたちは、もう中学や高校生です。
 
身の回りの防災を見渡したところで、次に自分の居住空間や居住地域の防災を考えてみましょう。耐震を施した家、免震構造のマンション、海や河川から遠く緑の多い地域などに住んでいる人たちは、安心とは言えなくても危険度は相対的に低いかもしれません。「都心の新しめのマンション」に住んでいる「YOHEI」さんは「どれほど大きな地震が来ても、室内にいれば安心という感じ」と言います。一方、「傷んだら応急措置をする」というところに住んでいる「地球交響曲」さんは「大元の建物が壊れたら駄目だよなと諦めモード」と言います。
 
震災は住まいの危険度だけでなく、火災が広がりやすいなど地域の危険度も大きく影響します。安心したり、諦めたりする前に、ハザードマップや避難場所をしっかり確認することも大事ですね。「地球交響曲」さんは「すべての面での災害対策格差みたいなものがどの程度あるのか」という情報を知りたいといいます。地形や住宅の密集度などの客観的な危険度とともに、自治体の防災への取り組みも含めた「災害対策格差」は知っておきたいですね。
 
地域を見渡した後は、国全体の対策を考えてみると、いろいろな不安が見えてきます。「hiro2」さんは「原発は稼働させない、という選択肢で災害を防ぐことができるのに、政府がその選択をしないことが不安」と述べています。「Piwo」さんは「風力・太陽光発電が増えたことによる自然や生態系への影響、再稼働した原発の安全性、廃棄物の管理、まだまだ課題は山積み」と指摘します。
 
「blueberry53」さんは「原発の議論が思考停止している」ことを危惧しています。「既設原発の安全対策は充実しても、その社会的評価は止まったまま」になっているからで、「再生可能エネルギーという言葉だけに明るい未来を感じようとしている」と言います。真の合意形成を目指す議論が行われないまま再稼働を進めても国民の不安はなくならないし、逆に「再生可能エネルギー」という言葉に期待するだけではエネルギーや地球温暖化問題は解決しないということでしょう。
 
防潮堤もそうですが、住民の合意形成ができる前に、行政が政策を押し進めると、思考停止とともに不安と不満がくすぶり続けます。「nekosaurus」さんは個人の防災意識が「地域や社会、国レベルでどこまで共有できているのか」と疑問を出しています。防災は、個人、地域、国の意識や情報が共有される「三位一体」が大事だということでしょう。
 
ということで、地方自治体や国の防災対策、さらには原発の地震対策について、さらに議論をしてみましょう。「震災から10年、教訓を生かしていますか？」という設問とあわせて、ご意見をお聞かせください。


★高成田議長の過去の円卓会議より
・アメリカは大丈夫、だと思いますか？
・東日本大震災から4年。風化したのでしょうか？（2015年3月）
・震災復興、進んでいると思いますか？（2011年8月）

• 2021.03.01
• 高成田享 コラムニスト、元 朝日新聞論説委員