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スペシャルトークに登場したのは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の石倉洋子さん、そして政策研究大学院大学教授、黒川清さんです。国際派で多彩なキャリアをお持ちの両氏ならではのセッション、期待が高まります。
「ボーダーを超えるって、一体何なのか。ちょっと考えてみました」
トークは石倉さんの言葉からスタート。席には座らず、壇上で右へ左へダイナミックに歩き回り、会場全体に響く大きな声で皆さんに語りかけます。
「まず皆さんに質問です。どういうふうに定義していただいても構わない。私はボーダーを超えたいと思っている人、手を挙げてください」
会場では、ほとんどの方の手が一斉に挙がりました。
「それではこのあと、黒川さんに聞きましょう。ボーダーを超えるって何ですか?」
ここでようやく石倉さんが着席。黒川さんが答えます。
「海外へ出るなど場所を変えるのもそうだし、会う人たちを変えるというのもひとつ。まったく違う仲間のところに出かけるとか」
「それじゃあ、私たちはボーダーを超えたくない人たちのところへ行かないと」と石倉さんが返し、会場は大きな笑い声に包まれました。
絶妙のコンビネーションのおふたり。2006年に共著『世界級キャリアのつくり方』を出版されていますが、最初の出会いは日本学術会議でした。メンバーに加わった石倉さ んは、会長を務めていた黒川さんに出会ったことで「ボーダーを超えたい」と強く思ったと言います。
「ネットワークが桁違いの人。それを活用して、私がそれまで知らなかった自然科学の分野の人々に会えました」
そんな黒川さんが考えるボーダーとは、国などの「地域」、そして歴史の中での座標軸で事象を捉える「時間」。それを受けて石倉さんはもうひとつ「分野」を挙げ、最近のご自身の体験を話されました。
「4月にビジネススクールからメディアデザインに移ったのですが、自分に足りない、勉強したい分野だと思って入ったけれど、あまりのレベルの違いに自信を失い、打ちひしがれたんです」
そこからご自分の考えを切り替え、前に進んだ話になると、黒川さんも大きくうなずきます。
「同じところにずっといてもつまらない。分野を超えることはものすごく苦労することだけど、プラスになって返ってくる。だから失敗なんてたいしたことはない」
さらになでしこジャパンが優勝するまでの道のりを例に挙げ、「やっぱり日本は女性。『このやろう精神』がある。僕は本当にそう思っています」と女性たちにエールを送りました。
真剣に聞き入るひとときの中で、ときおり笑いが起こり、会場を大いに沸かせてくださった石倉さんと黒川さん。おふたりの間にもまったくボーダーがないことが伝わってくるセッションでした。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。