佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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秋池玲子さん

ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター

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でも欧米の組織って

佐々木

今、ボストンコンサルティングの立場でもいいんですが、いろんな企業をご覧になって、日本の企業はやっぱりここが弱いよねっていうのは何かありますか?

秋池

日本人って、いくつかの具体例を見ると、突然インスピレーションを湧かせて抽象的な議論に入ったりしますよね。

佐々木

ひらめいちゃう。

秋池

そう。でもアメリカやドイツの人などと議論をしていると、まず抽象的なフレームワークの議論があって、皆でそれを合意してから具体的なものに落としていくじゃないですか。そういう意味では、議論のずれが比較的少ない。

佐々木

確かにそうですね。

秋池

日本人ってそこで……。

佐々木

勝手な論理で進んじゃうっていう。

秋池

だから、合意しているようで良く聞いてみると違うことを言っていたり、逆にいつも論戦になってしまうけれど実は目指すものは同じだったりすることもありますよね。「常務が言っているのは3年後のお話で、社長が言っているのは10年後のことです」と、時間の感覚を明確にするだけでも議論がかみ合うようになったりします。「いつか、こうしたい」って仰るときの「いつか」の時間が、ずれているということですよね。

その他も、たとえば「システム」って仰るときに、それは人事制度みたいな社内のしくみのことを仰っている場合もあれば、ITのシステムみたいなのを仰る方もいれば、という感じで、言葉の定義が曖昧だから、いつまでも議論がかみ合わない、というようなこともあります。

そういうことを丁寧に解きほぐすだけでも議論の質が上がって、会議も、より実りあるものになる。

皆さん、優秀で、やっぱり選ばれただけのことはあるという方が経営陣なのだから、そういう方たちの知恵がより引き出されるような議論が行われ、適確な指示が出されるのは経営の効果を上げますよね。

弱みのもう1つは、先ほどから何度も出ていることですが、前例にないような決断、事業を売却するとか、やめるとかいうのを、「やっぱり少し様子を見ようか」とかいう優しさが出てしまうことがある。

決めきらない理由のひとつは、事実を積み上げた分析がしきれていなくて、でも曖昧模糊とした中で決断するには決断の度合いが大きすぎるからです。「この事業はどうもモノにならなさそうだな」と感じていても、感覚的な決断では、従業員に対しても、株主や債権者に対して説明責任を果たせません。自分として経営判断可能なレベルまで見えるようになった中で決断すれば、曖昧模糊とした中でするよりは自信を持って決断できるはずです。

佐々木

事実の積み重ねがあって、「ここのラインを越えたから、やっぱりやめよう」っていうのが、自分でも何となく説明がつきやすいっていうことですね。

秋池

ええ。そこの緻密さが少し欠けるときがあって、それで決めかねているということもあるのではないでしょうか。

ただ、これもとても大事な点ですが、経営をしていてすべてが見えることはないし、成功する確率が100%ということはありませんから、どれだけ準備しても、最後はすごく迷うでしょうね。


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