佐々木かをりのwinwin

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秋池玲子さん

ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター

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いくら優秀な方でも、やっぱり週に1時間ぐらいは

佐々木

そうですね。日本の経営者が、もし西欧の経営者と比べて、そういう徹底力やディスカッションを積み上げていくような力が足りないとすると、その理由は何ですか。今、日本でそういう人が足りないんですか? それとも、日本の教育の課題があるのでしょうか。これからどうしたらいいのでしょう。

秋池

日本人って情緒的で、だから素晴らしい文学や芸術が生み出されるという側面もある一方で、ものごとをはっきりさせなくても、誰も「あなたの言っていることは違うでしょ」と突き詰めたりしないで、ほんわかと気持ちよく会議が終わっってしまうから、会議室を出たときに、今から自分が何をするのか分からないとか、部下に何を言うのか分からないということはありそうですよね。

日常生活でつめ過ぎると、ちょっと理屈っぽい面倒な感じになってしまいますが、仕事のときは、せめて言葉の定義と時間感覚をきちんとすれば、議論の質があがりますよね。

佐々木

学生時代からやっていかないと。

秋池

そうですね。でもこれは、この風土で育つと簡単ではないのでしょうね。母親と赤ちゃんの会話から始まり……。

佐々木

何かを「買って」って言ったときに、お母さんは「今週は買えないわ」と思って「ダメよ」と言い、子どもは、今度のお誕生日に買ってと思っていて「いいじゃない、ケチ!」となる、なんていう会話から、いつの話かっていうのを明確にしないといけない。

秋池

家庭の会話としては、仕方のない部分もあるので、仕事とは切り分けるということでしょうね。

社長のスケジュールを伺うと、すごくお忙しいですよね。お客様へのご挨拶とかディナーとか、社内の会議とか。お忙しくて、自分だけで考える時間を持てずに苦慮していらっしゃる。いくら優秀な方でも、やっぱり週に1時間ぐらいは1人で考える時間を持つようにした方が。それだけでも、すごく発信の仕方が変わると思うんです。

パッと思いついて、曖昧に部下に指示を出しても、皆優秀だから、直接聞いた人がそれぞれに解釈して、指示がさらに下に出されて、全体としてはかえって無駄をすることもありますね。

リーダーが言葉を発するときは、かなり考えてからでないと組織は大変なことになってしまいますよね。自分は気楽に、「僕は部長のときと変わらず、皆と気楽に話したいのだよ」って思っていらっしゃるかもしれないけれども、やっぱり立場が立場になったときの発言の重みは、意識していかなくてはならないでしょうね。そういうことも含めて、訓練かもしれません。

佐々木

日本の経営者にトレーニングが必要になってきた。

秋池

リーダーとなる方にとっては難しい時代で大変だと思います。皆さん、すごく優秀だし、お話をすれば、もういろいろ教えていただくというか、学ぶことばかりです。その上、人間的にも深みのある方が多いですしね。選ばれてきている方たちなので、それを組織の隅々に行き渡らせる方法論が不足しているということではないでしょうか。

佐々木

仕組みとしてチーム力を上げるのには役立っていないっていうことですね。だから、もう少しその辺をスムーズに血液が循環するような、全体で機能するようなことを集中して考えるべきなんでしょうね。


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