佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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エロック・ハリマーさん

川崎市外国人市民代表者会議第8期委員長

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たぶんあれは人生初めての戦い

佐々木

高校2年生のときが、初来日なんですね。それは1年間の留学とかですか。

エロック

いや、違います。3ヵ月ぐらいですね。ホームステイプログラムで、池袋の魚屋さんのお家に。

佐々木

魚屋さん? へえ、面白いですね。

エロック

商店街の真ん中にある魚屋さん。

佐々木

それは、いろいろびっくりした体験ができたでしょうね。

エロック

その家族のお陰で日本が好きになって、帰ってきて2~3年生で、卒業したんですね。

で、ここでもまたアクシデントがあるんです。元々、成績トップの人は大学は推薦という形なので、私、トップだったので、社会と政治学部に応募したんです。私の成績なら大丈夫だと、ずっと思っていたんです。「留学したし、英語も大丈夫だし、OK。バッチリ」と。完璧に準備ができていたんです。そして「私は外交官になる。ガジャ・マダ大学の社会と政治学部に行って、外交官になって、もう、素晴らしい!」と。

佐々木

「そしてオランダに行く!」と。

エロック

そう! 大使として。……そうしたら、ダメだったんです。

佐々木

どうして?

エロック

分かりません。受かりませんでした。手紙をもらって、でも私の番号と名前がなかった。だから推薦がダメになったんです。

佐々木

それは何かの間違いかもしれないけど。

エロック

いや、でも今考えてみると、それも運命だったかもしれないです。

佐々木

じゃあ、それで「えっ、嘘! ありえない」っていうことで、大泣きし?

エロック

もう、おそらく2日間ぐらい誰も私に話しかけられない状態。父と母も「放っておいて」って兄弟皆に言ったんです。「どこが間違ったの?」って、部屋で、本当に汚い言葉を使ったりして、「信じられない!」みたいなことを言っていたんです。

もっとひどいのは、家の外に出ると皆が聞きたがるじゃないですか。「エロックちゃん、どう? もう、行くんでしょ?」みたいな。それをどうやって答えればいいのか。自分のプライドが、ものすごく……。たぶんあれは人生初めての戦いというか、この私の失敗をどうやって他人に説明すればいいのかって、すごく悩んでいました。


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