働く女性の声を発信するサイト『イー・ウーマン』
あれだけの大物の俳優たちを口説くのも、道のりがあったのだろうと思いますが、これはご自身で口説かれたんですか?
エミリー・モーティマーに関しては、完全にシナリオですね。彼女と最初に会ったとき、「私は、もうハリウッド的シナリオを読みすぎていて」というふうにエミリーが言ったんです。
で、「水滴が、ポトン、ポトンと、同じ大きさの水滴が落ちていって、ハッと気がついたら最後にそれが池になっていた、という感じのシナリオで、それが誰にも書けない、あなたのオリジナリティーね。そこが本当に魅力的だったから、このシナリオのこの役をやりたいと思ったの」と言ってくださったとき、涙が出るほど嬉しかったんですね。
それと彼女が言っていたのは、「ハリウッドの映画では、ここまでコンプレックスな心理を描こうとしない。お腹の中ではこう思ってるのに、顔はこういう表情でいるとか、無言の「間」というのもアメリカにはない表現。私たちはそういうコンプレックスな演技を求められることは滅多にないのよ。だから女優として、めちゃくちゃやりがいがある」と。
たしかに彼女の表情の一つ一つが本当に素晴らしくて、何だか分からないんですけど、途中から日本人に見えてくるような。確かにこういう立場だと、こういう顔になってくるんだろうなっていう変化さえ見えて、素晴らしかったですね。
相手役の野口米次郎も、私は、中村獅童さん以外の人はちょっと考えられなくて。
何だか、すごくぴったりでした。お人柄を知るわけでもないし、ワイドショーでしか私生活もしらないのですが。
歌舞伎の人の演技って、やはり幼い頃からの積み重ねがあるからでしょうね、ルックスがいいからタレントとかモデルさんから俳優さんになった、というのという違う存在感がある。つまりアメリカの、それこそエミリー・モーティマーのクラスの女優さんと対峙して互角に闘うときは、よほど存在感がないと吹き飛ばされてしまう。そういう意味で、私は中村獅童さんしかいないんじゃないかと、シナリオを書いているときから思っていたんです。日本の男性の若手の俳優さんって子どもっぽいんですよね。
まあ、ああいうスキャンダルもあったことだし、彼はそれと自分が重なるので、それこそ事務所的に言えば、「断る」っていう可能性があると思って。それでお願いに行ったんです。でもそこで私は彼のプロフェッショナルさを見たんです。「自分はこういう役をやったことがないから、ぜひやってみたい」と仰って。