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社長が3年間奉公したような精神の若者は、やっぱり減っていますか?
減っているというより、まず、いないですね。私たちの時代の技術者は奉公して覚えるということは、当たり前だったんですけど、それが今の時代にマッチするかというと、難しいんでしょうね。このスピードの時代にあっては。
今、私は美容師の人たちを2年でスタイリストに育成しろって言ってるんですよ。これは私の思いがあってね。美容師の専門学校を出るには、2年間で200万~270万ぐらい学費がかかるんですよ。本当に大変なんです。だから年収が600万円ぐらいのご家庭でも、子供を専門学校に進学させるのは大変なことなんですよ。
それなのに、その3割近い学生が美容専門学校を出ても美容師にならないという現実がある。学校を卒業して免許を取っても、化粧品会社に就職したり、あるいは違う業界に行ったりとか、美容師にならないんですよ。その理由が、生活ができないからだと言うんです。美容専門学校を出て、うちの美容師の初任給は16万5千円ですよ。
今、16万5千円?
今。青山、原宿で働いているアシスタントの人たちは15万にも満たないケースが多いです。
考えられません。
考えられませんよね。私はこれをやっている限りはね、美容業界の発展がないって言ってるんです。生活ができないですよ。だから結局、親がかりになるんです。高校の先生は、生徒が進路相談のとき、美容師になりたいって言うと、「美容専門学校は高いし、美容師になりたくても飯が食えるようになるまでは、時間のかかる大変な仕事だぞ」と言って勧めないんですよ。
だから今、美容専門学校は定員割れをする所も多いんですね。それで私、まず初任給を18万まで上げられないだろうかってシミュレーションしてみたんですが、これがなかなか難しい。そこで何か良い救済策はないかって考えたのが、早くスタイリストに育てることなんですよ。
お客さんにつかせてあげる。そうすると、今のように一人前になるまでに最低「4年、5年が当たり前」という常識を覆さなくてはいけないんですね、根本から。
斬新な、そして根本的な改革で、素晴らしいと思います。そして考え方も、ペイド・インターンシップとしたらどうでしょう。給料で働いているというよりも、一人前になるために、2年間は、授業料を支払わなくていいので、わずかな給与で学習しているという考え方。
短期間で学び、そして3年目から4年目にはデビューさせる。そのシステムを今、つくっているんです。でも、そんな話を美容業界の知り合いの人たちにしたら、邪道だって言われたんですよ。「須藤さんだって、こんなに苦労して、何年もかけて、やってきたじゃないか。できるわけがないじゃないか」って。
でも「美容と経営」という専門誌に私と同じ考え方が載ったんですよ。「これからの美容業界は少なくとも3年でスタイリストに育てなければ、美容業界の将来はない」と。
「これだ!私と同じ考え方の人がいる!」って。これからみんなで美容業界を改革をしなくてはいけない、教育制度の見直しをしましょうって言ってるんですよ。