佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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小谷真生子さん

テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』キャスター


民間企業は一生懸命やっているから

佐々木

ちょっと番組のことに戻すと、番組を13年動かして経済の変化を見ている小谷さんから見て、2011年、2012年、日本はどうですか? 日本の経済を見ていて。

小谷

今の日本が致命的なのは、決定に至るまでと、他のあらゆるプロセスのスピードが全般に遅すぎることと、危機感のなさだと思います。
一般的に、人間、危機感があれば焦って、対処の仕方にもスピードが出てくると思うのですが、今の日本には欠けています。

政治・政策が産業界とコラボできていない、と感じます。コラボできたとしてもスピードが遅い。この感覚はバブル崩壊から多くの人が感じてきたものだとは思いますが、最近、まわりの国が猛烈な勢いで追い上げてきているので、正直ここ1~2年、内心焦燥感があります。中国、韓国のスピードは、恐るべきはやさです。政治、企業の動き、決定から行動にうつすまでのはやいこと。特にここ1年でそのスピードに磨きがかかっています。ある識者がこう仰いました。「日本はゆで蛙だ。完全にゆで上がって命つきないと日本という国は危機を感じられないんだ」と。
また、ある企業経営者はこう仰いました。「グローバル市場で他の国の民間企業と闘うにしても、現状のままでは日本企業は不利な条件で闘っている。環境整備ができていない」或いは「規制でがんじがらめにされて企業はスピード感を出したくとも出せずにいる。日本の成長のための政策が、絵にかいた餅になっていてなんら、現場と連動していない」
現場の皆さんの声を聞くにつけ、「今」変えれば日本にもスピードが出るのに、なぜ?と思います。官民の連携を韓国や中国のようにできれば、日本は再びスピード感をとり戻して活気が出てくると思う。

仕込んでから時間がたたないと結果はでないから、「現状に安穏とせず、今できることからどんどんやっていけば」、2年後の日本から見える5年後や10年後の日本に希望が見えてくるかもしれません。
希望が見えれば、負の話にも皆、耳を傾けてくれる。負担ばかりをいえば、希望がなくなります。「希望の青写真」が今の日本には無いのが一番の大きな問題だと思います。
「先行き不安」「先行き不透明感」は国のベクトルをさしていて「国の先行きが定まっていないから不安」「将来の日本と、自分の生活とを照らし合わせた将来像が見えないから不安」と同義語なのでしょう。

佐々木

経済界の方々とお話すれば、彼らがいかに正しく仕事をしようとして、いかに工夫をして、努力をして、開発をしているかっていうのは、実感があるんでしょうね。

小谷

法人税の減税も対応がおそいと思います。1年前あるいはもっと前に減税しておくべきだった。財源は間接的に国民からうすくとるとしても、お給料が下がらなければその方がよほどよかったのではないでしょうか。

企業が皆、自助努力でキャッシュを貯め込んで、国外投資にふりむけようとしています。国内投資ではなく、海外に投資する機会を窺いながら、です。
今となっては、法人税の減税よりも投資減税だ、という識者もいらっしゃいます。貯めたキャッシュを国内に投資するための政策として有効かもしれないと。政治がもっと早い段階で産業界に向いていたら、国民の皆さんの生活は今よりもっと楽になったかもしれない。会社からのお給料が減れば、だれでも家計を締めるわけですから。悪循環です。

佐々木

どうして政治が実体とずれちゃうんでしょう? どうしたらいいんでしょう、日本は。

小谷

基本的に官僚は優秀な方が多いと思います。
でも同じ案件を違う省庁が扱っている。「何が国益か」という観点を省庁別でみると、必ずしも一致しない。というよりぶつかりあう。政治家は大臣クラスもそのことに翻弄されている。時間が無駄に過ぎてゆく。「コップの中の嵐」のようなものが政治にはあまりにも多くて、しかもドメステイック。「大所高所」のグローバルな視点から日本を客観視して、それをリードできるだけの人材が出てこないかしら。独断にも近いリーダーシップが今の日本には必要なのでは。


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