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私は、警察という組織は言ってみれば危機管理の仕事をしていると思っているんです。いろんな事件が発生したり、事故が起こったりするけれども、それは被害者の方にとっては、一生に一度あるかどうかという事案なんですけれども、たくさんの過去の体験と知見から、どんな事件、事故、災害であろうと危機対処の術(すべ)、つまりノウハウを知っている、全く新たな事案であっても、少なくとも国民の生命・身体・財産を保護するためにどう行動しなければいけないかを知っており、その使命感を持っている。まさに危機管理の仕事です。
私個人の役人生活を振り返ってみても、外務省出向してワシントンDCの日本大使館に勤務して外交問題を自ら担当して国際政治における安全保障上の危機を間近に感じました。国際的な危機管理の仕事です。防衛庁、今の防衛省ですが、にも勤務していました。ここも軍事的な側面から危機管理を行う職場で、当時は湾岸戦争の頃なんですけれども、担当責任者として国際的な危機管理の仕事に携わりました。総理大臣秘書官をさせえていただいた時も、いろんな仕事をやりましたが、広い意味で危機管理という分野で内閣官房や各省庁の仕事を担当させていただきました。
ですから私の役人生活というのは、危機管理というキーワードで一つ括れるな、と思っておりましたので、退官したときに、私の体験とノウハウを民間企業の皆さんと共有したいという気持ちがあって、それで現在の会社を設立したのです。今年で設立8年が過ぎて9年目に入ったんです。
そこで企業に話を向けたいのですが、金重さんはたくさん企業の顧問もされたり講演もされたりしているわけですが、今、民間企業における危機管理で大切なこととして、どういうポイントが挙げられるんでしょうか?
大きな企業、小さな企業、あるいは新しく出てきた企業とか、古くからの老舗の企業とか、いろいろタイプがあって、それぞれ起こることは違うんですが、企業というのは事業環境の中でリスク・危機に取り囲まれている状態にあると私は思っています。
じゃあ、どんなことがあるのかといえば、たとえば重大事件、たとえば横領・背任などの刑事事件、コンプライアンス違反、偽装表示、リコール隠し、インサイダー取引、最近も新聞でいろんな事件が報じられていますけれども、“対岸の火事”ではない。そういう事件を起こす恐れが、常に企業内部にある。それが、企業体質によるものなのか、あるいは危機管理に関する知識・経験不足からくる危機対処の稚拙さによるものなのか、あるいは純粋個人の性格等の問題によるものなのか、原因はいろいろあるんですけれども、そういう企業内部で発生する事件があります。
それから、これ以外に、企業が社外から攻撃を受けることもあるわけです。それは、反社会的勢力や職業的な悪質クレーマーなど、いろいろなことがありますね。自分たちは被害者なんだから仕方がないじゃないかというお考えの企業幹部もおられますが、私は、被害者になるということの企業の脆さもあるはずで、ここも実はきちんと内部統制しておかなければいけないんです。