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それから、企業の皆さんが考えなきゃいけない部分として、反社会的勢力に対する対応というのは、実は非常に今、喫緊の課題になっています。反社会的勢力というのは、具体的には、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ(えせ同和行為者など)、政治運動標ぼうゴロ(えせ右翼など)、特殊知能暴力集団(会社ゴロ、新聞ゴロ)などを指します。
政府の犯罪対策関係閣僚会議で、いろんな犯罪対策の議論をするんですけれども、その幹事会の申し合わせで、反社会的勢力との関係遮断をやりましょう、ということが4年ぐらい前に決まったんです。このメンバーは各省庁の方々ですから、それぞれの所管分野で今、関係遮断対策が浸透しつつあるということです。たとえば、金融庁が一番の典型例になるんですが、金融機関、保険会社、証券会社などに、暴力団を含めた反社会的勢力の排除についての指導通達が出されているわけです。
私が社外役員をしている企業でも、役員は全員、反社会的勢力と関わりがありません、という誓約書に署名しています。
今はそういうものを書かなきゃいけないようになっていて、例えば金融機関では、もちろん不正融資をしてはいけませんが、普通預金口座や当座預金口座を作ることもさせないし、貸金庫さえも使わせない、ということになっているんです。どんどん今そういうことが浸透してきています。
国土交通省関係で言うと、談合の禁止などと合わせて、公共入札に絡んで反社会的勢力の関係者が関与しないように対策を講じましょうということなんです。
日本経団連の企業行動憲章の中でも「反社会的勢力との関係遮断」という規定が明記されています。ただ、「関係遮断」という意味が、まだ実は浸透していない面があるんです。
企業人で、反社会的勢力に金を渡さなきゃいいんだろ、と思っている人が結構いますが、でも、そうじゃない。これは取引するな、交際するなということなんです。だから、年賀状とか暑中見舞いを出すのもダメ。一緒に飲みに行って、金は別々に払います、と言ってもダメ。
もっと経済活動に絡んで言いますと、たとえば、ここに1億円の価値のある土地があるとしますね。これを民間企業が持っていて、反社会的勢力に売ったとします。5000万円で買ったとしたら、企業が残りの5000万を不当に提供したことになるんです。だから、それはいけない、と。これは企業の人も分かっているんです。
でも、それは1億円で売ってもいけない。取引になるから。
そのとおりです。この1億円がまったくの市場価格で、どこから考えても客観的な価値が1億円で、そのまま他の人にも1億円で売るものを、たまたま反社会的勢力に1億円で売ったら何が悪いんですか、と言うことをいう人が経済人の中にもいるんですが、それはとんでもない話です。取引をしてはいけないんです。そういうことをまだ分かっていない人たちがいるんです。
ただ、厄介なのは、私は反社会的勢力の関係者ですと名乗るものも少なくなっています。自ら表に出るのではなく、「共生者」(暴力団の威力、情報、資金などを利用したり、逆に資金提供する者)を利用して企業活動を仮装したりして、活動が不透明化していますから、知らない間に反社会的勢力と取引をしていたということもありうるんです。
それから、今年中に全国の都道府県で暴力団排除条例というのが成立するんです。法律ではなくて条例で、全国にこういうものができるのは、めずらしいことだと思うんですけど、そのポイントは、暴力団と交際をしない、という点です。暴力団員等に有利な取り計らいをするとか、利益供与するとか、暴力団事務所を用意するとかの行為を行った企業に対して各地の公安委員会(都道府県警察)が、その企業に勧告をして、それを聞かなかったら、企業名を公表する、という条例なんです。条例というのは通常罰則がついたりしますけど、たとえば50万円の罰金を払うよりも、企業名を公表されるほうが企業にとっては社会的響度は大きいですね。そういうことが今行われるような時代になってきているということです。