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会議番号:3066 開催期間 2010年11月29日- 01月15日
番号制度の議論が始まっています。これまで、納税者番号制度という形で議論されてきましたが、民主党政権下では、「社会保障・税共通番号」という形で議論が行われています。 昨年暮れの政府税制調査会に提出された「『共通番号制度』を政権期間中に導入する場合のスケジュールのイメージ(案)」では、10年中に政府における共通番号導入の決定、11年中に法律の手当て、12年中に実務的な準備作業、13年に制度の導入、14年1月から共通番号制度の利用開始となっています。 番号制度というのは、国民一人一人に生涯変わらぬ番号を付して、社会保障や税制面で活用しようというものです。では、どのような活用方法が考えられているのでしょうか。政府部内の議論はそこまで進んでいませんが、これまでの議論を集約すると、おおよそ次のようなことです。 第1に、社会保障分野での給付を正確に行うためです。社会保障の負担と給付(介護保険料、国民年金保険料、高齢者医療自己負担額や保育所の保育料など)については、さまざまな所得制限が課せられていますが、その所得が正確なものかどうか正確かつ効率的にチェックができるようになるということです。欧米では、このような情報交換は当たり前のように行われています。 さらに進んで、社会保障に関する個人情報を一元管理し、年金、医療、介護の給付と負担の関係を明確化することも考えられます。もっとも、民主党は、「電子カルテ、レセプトのオンライン化などは番号制度とは切り離した、独自の制度として検討する」としています。 第2に、税制と社会保障をまたがるような新たな制度を構築することが可能になります。 その代表例が、給付付き税額控除です。かつて円卓会議でも取り上げたことがありますが、給付付き税額控除というのは、社会保障制度と税制を整理統合して、一体的・効率的に運営する制度で、一定時間就労する中低所得世帯に対して減税(税額控除)や給付を与え、勤労に向けてのインセンティブを供与しながら、貧困対策にも役立つという制度です。 欧米では勤労税額控除(EITC)と呼ばれ、導入が進んでいます。さらに、消費税率引上げ時の逆進性の緩和策として、基礎的生活費の消費税率分を所得税額から控除・還付する制度(消費税逆進性対策税額控除)も考えられます。 第3に、正確な所得を捕捉するための税務における番号制度の導入です。現在民主党では、税務署に提出する所得情報の拡充の議論が始まっています。 他方で問題もあります。最大の課題は、プライバシーの問題です。賛否の最も分かれる点で、ネット社会の中で生じる漠然とした不安感のようなものとをどう折り合いをつけるかという問題です。これに対しては、具体的にどのようなプライバシーの問題が生じるのか、それに対して、どのような対策を講じれば不安感が軽減されるのか、つめた議論をしていくことが必要です。 円卓会議では、私が議長となって、2005年6月と2009年2月に「納税者番号の導入に反対ですか?」という議論をしていますが、今回は、政府部内で導入に向けた検討が始まったことを受けて改めて議論をしたいと思います。 議論の進め方としては、欧米の状況などを説明しつつ、番号を活用した新たな制度はどのようなものが考えられるのか、プライバシーの問題とは何かなど、皆さんと一緒に論じていきたいと考えています。 まず皆さんは、上記の1、2、3についてどう思われますか。番号を活用した新たな制度はどのようなものが考えられると思いますか。 たくさんの投稿、お待ちしています。※参考資料として東京財団「納税者の立場からの納税者番号制度導入の提言」 森信茂樹氏がプロジェクト・リーダーを務める東京財団「税と社会保障の一体化研究」では、納税者番号制度が「国民にとって受益となる新たな政策」を提供するという視点から制度の導入を提言しています。番号制度を考える上で重要な日本の現状やプライバシーの問題などを各分野の専門家の方々が分析しています。ぜひご覧ください。
※森信さんの最近のご著書: 「日本の税制――何が問題か」 (岩波書店)
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