佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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荒井由希子さん

国際労働機関(ILO)ジュネーブ本部
多国籍企業局 シニア・スペシャリスト

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多国籍企業の途上国でのプレゼンス、特に雇用のインパクトを最大化できるか

佐々木

今回のテーマは、サプライチェーンの中での労働問題のことを話していただいたんだけど、荒井さんの今のILOでのお仕事は何か、というところから教えてもらっていいですか?

荒井

今現在、ILOのジュネーブ本部の多国籍企業局というところにおります。ILOは、ご存じのように、労働社会問題を担当する国連の専門機関で、実は国連ができる前からあるんです。1919年から。ILOは、国際労働基準の設定・監視と国際的な労働者への保護を重点としてフォローアップする機関ですけれども、近年ますます技術協力にも力を入れたり、労働基準の設定と監視だけではなく、雇用の促進や企業の開発といった持続的発展における企業の役割に焦点を置いています。

多国籍企業に関してILOが注目しはじめたのは最近かというと、そうではなくて、60~70年代に、今では「グローバル化」という言葉を使いますが、だんだん経済の著しい国際化がみられ、企業が途上国に進出する中で、様々なプラスのインパクトもあればマイナスのインパクトも生じた。そのマイナス面をいかに抑えられるか、と同時に、いかに多国籍企業の途上国でのプレゼンス、特に雇用のインパクトを最大化できるか、というところに……。

佐々木

「雇用のインパクトを最大化」っていうのは、きちんとした雇用を作るということですね。

荒井

ILOはdecent workというモットーを掲げてますが、非常に分かりにくいコンセプトかもしれません。「人間らしい、やりがいのある仕事」というふうに訳せると思います。結局、雇用の促進といって単に雇用の機会を創出するだけでなく、not any job but decent jobということで、クオリティ面にも配慮した仕事を、多国籍企業およびそのサプライチェーン内において最大限に創出したい、目指すのはmore and better jobsということです。

多国籍企業は、その事業活動を通じて、何百万人もの労働者の生活、権利の保護に対して潜在的に多大な役割を担っているといえます。労働基準の切り下げによる「底辺への競争」は、ILOにとっては大きな懸念です。私の所属している多国籍企業局は、グローバルビジネスの途上国の進出先での雇用・労働をよりよくするために国際労働基準及び原則を軸に活動する局です。だからCSR、企業の社会的責任も、私の所属している多国籍企業局が扱うテーマということになります。その中で、私は国レベルの活動と調査・研究に携わってます。つまり、多国籍企業の受け入れ側である途上国が、私の仕事の現場です。


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