佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

153

荒井由希子さん

国際労働機関(ILO)ジュネーブ本部
多国籍企業局 シニア・スペシャリスト

講演依頼について問い合わせをする

戦後初めてビジネス代表者と政府代表者が一堂に会して

荒井

これらは西アフリカの写真、まずはリベリアからです。先日の女性会議でのスピーチでもお話した、砲弾跡とひどい劣化でボコボコの、水も電気の供給もない、労働者代表たちの本部。昼間なのに中は真っ暗、扇風機も冷房もなく、サウナ状態ですよ。でも、彼らの話は興味深かったので、3~4時間、とことんお話を聞きました。現場に飛んで遠くまで行っているわけですし、生の声を通じた現状把握は重要です。でも、もう、汗だく、ぐったりです、写真からは分からないと思いますけど。これが労働者代表たちです。

佐々木

写真だと、意外ときれいに映ってしまうけど、現状は。

荒井

いや、もう課題山積み、大変です。戦後の復興は、まだまだこれからという感じです。で、こちらの写真は、戦後初めてビジネス代表者と政府代表者が一堂に会して、開発アジェンダである、若年雇用について話し合いをしたときのワンシーンです。ハイレベルな会議で、私の横は労働省の大臣、そのお隣が使用者側、ビジネス部門のリーダー。商工会議所の長であり、多国籍企業の社長でもあります。その他、関係省庁、国際機関、大学、多国籍企業、労働者、などの代表が同席しました。

長年に渡って続いた戦争のせいで蓄積された不審感をも乗り越えていろいろな分野の人たちが同じところに集まったのです。一つのILOの報告書をきっかけに、国の戦後開発・復興における雇用創出の必要性を共通の課題として確認し、みなが一緒に国づくりに取り組む第一歩となりました。

佐々木

場所はリベリアの商工会議所ですか。

荒井

はい。商工会議所の一室です。ビジネス界が、このlittle historical momentとなった対話の場を提供してくれました。これを機に若年雇用促進タスクフォースも立ちあげられて、調査の分析と提言に基づき、メンバーとなった多国籍企業による自主的な活動が展開されています。今、自分はもう国を去ってしまったけど、国にいる当事者たちによる活動が続いている。築き上げたメカニズムが動き続けているということで、嬉しいですよね。

グローバルビジネスも最近、国の開発を担う1プレーヤーになってきました。企業は社会的な意味での競争力をも備えていなければなりません。つまり、CSRも企業のコア戦略として位置づけ、フィランソロピーとかコンプライアンスではなく、その自主的な活動または本業を通じて、生産性を高めるとともに、社会への貢献をもすることが、いかに重要なビジネスセンスか、ということにだんだん気づき始めている。

佐々木

同感です。

荒井

そういうアプローチの労働CSRをILOは推進しているわけで、もちろんフィランソロピーもすごく意義深いとは思いますが、ILOの扱う分野ではないんです。で、アフリカでは、多国籍企業がそのビジネス活動を通じて如何に若者の雇用を促進できるか、例えば、インクルーシブ・ビジネスとか、サプライヤーである小企業の生産性を上げるためのサポート、人材育成に携わる大学との協力関係の強化、とか、そういったものを含めて話し合ったんです。まさに、最初にお話した多国籍企業の進出先での雇用インパクトの最大化、です。


上:リベリア労働者代表たちと汗だく論議
下:リベリアのハイレベル会議

  • 22 / 25


バックナンバー

過去の一覧

ページの先頭へ