働く女性の声を発信するサイト『イー・ウーマン』
すごく忙しいと思うんだけど、どのように勉強し、自分を高めてるんですか。
私、もともと専門はラテンアメリカなので、たとえばアンゴラ、ギニア、コートジボアール、シエラレオネなどは、一から勉強するんです。マノ川沿いの、マノ・リバー・ユニオン4ヵ国って最初に言われたとき、大体西アフリカの辺りだとわかっても、どの国がどこだか分からない。「マノ川ってどこだろう?」って、地図を見て、ギニアだ、シエラレオネだってまずは位置の確認。4ヵ国の経済データ、主要産業、労働統計、人口など基本から勉強する。資料を読む。専門の資料のみならず、幅広く読んで、人に話を聞いて、できる範囲で知識を吸収する。これが、楽しい!
未知の世界を知るって、何だか地平線がぱーっと広がるような気分になる。また、リベリアとかグローバルサプライチェーンの末端にあたる国の話って、サプライチェーンのダウンストリーム、つまり先進国の消費者や市場と関係があるので、本当にグローバルなアンテナを立てていないといけない。という意味で、なるべく幅広く勉強します。たとえばCNNとかBBC、France 24を流して聞いていることもありますが、いろんな国に行ったらローカルのラジオを聞く。または、ラジオを一日中聞いているドライバーさんに、ホットなニュースを教えてもらう。
企業がどういうふうに関わっているかというのは、アニュアルレポートやCSRレポートも読むわけですね。
いっぱい届きます。企業の事例もかなり把握していないといけないし、世界の主要なトレンド、欧州はどうだとか、アジアはどうだとか。実は私、日本の事情には弱いんです。だから今後、日本企業のことを勉強したいと思っているんですけど。
この国のこういう事情を助けてくれとか、そういった訴えも来るんですか。
私個人は、そういったケースは受けられないんです。ちゃんと正式なルートがあるんですが、そういうことをあまりご存じない方からときどき来てしまって困ることも。私の所属する多国籍企業局は、いろんなケースに対してblack-and-whiteの判断をするところではなくて、いろんな国際労働基準およびその原則がいかにワークプレイスレベル、つまり企業内や国レベルでアプライされるかの説明とか解釈をサポートする。または実行、プラクティスに移すにあたっての技術協力をする部署なので、労使問題の仲介はしません。
紛争解決の場ではないですからね。
うちの局にたまたまケースが届いた場合は、ILOの正式なメカニズムや諸手続を説明したり、担当部署への橋渡しをしたりします。
で、さっきの勉強の話ですが、グローバルサプライチェーンに関する問題って、地球規模であるうえに、サプライチェーンってすごく長いし複雑、チェーンじゃなくて蜘蛛の巣のよう。テーマも人権、労働、環境、政治経済、法律、と多岐にわたるんです。労働法、投資法、産業政策、雇用政策など関連法政策は多く、労働問題も強制労働、児童労働、賃金、労働条件、労使関係などなど。さすがに、全ての国のそれを勉強するのは無理な話。効率よく必要な情報をピックアップしていく必要があります。
インターネットを使って検索し、いろんな人のネットワークでアップデートして、さらにニュースも読む。
そうですね。人と話すとお互い学べて良いです。ネットワークと言えば、ソーシャルメディアが背景にあるとされたアラブ地域の革命も、労働問題にすごく関係あるんです。特に、若年雇用に。で、6月のILO総会では、アラブ地域のユース・リーダーたちのパネルが企画され、生の声が聞けて面白かった。世界で起こっていることは皆、ある意味、働いている人、労働の世界に関連してくる。このテーマは広いけど、奥深いし本当に面白いです。めまぐるしい発展・動向に追いつけないんですけど、楽しい。
新聞は何語のを読んでいますか?
いい質問ですね。飛行機に乗ることが多いので、欲張って、機内にていろいろもらうんですけど。英語はFinancial TimesとInternational Herald Tribune。世界全体を把握するのに良いです。中南米を知るにはスペインのEl Paísとか、加えてアルゼンチンに行くときは、アルゼンチンのニュースペーパーも、フランス語圏のアフリカに行くときだったらフランス語のLe Monde。ジュネーブから出るときはTribune de Genèveとか。あとは自分の携わっている国に関わるところは、現地でローカルペーパーをペラペラめくる感じですね。だから、スペイン語、フランス語、英語の新聞でしょうか。毎日全部、は無理です。でも、アンテナはなるべく立てるようにして、浅く広く目を通す。
それでいて、ちゃんとスキーもしているし。
スキーはガンガンしています、ジュネーブにいるときは。山は、本当に素晴らしいです!
10キロ走っているし。この対談を読んだ人は、「私たち、一体何をやってきたの?」と、きっと思うんじゃないかと思う。なんでそんなにたくさんできるのか。そしてまだ30代。これからガンガン世界を引っ張っていってもらいたいです。話もつきないから、「また続きは表参道カレッジの講座で!」みたいな感じがいいかもね。
ありがとうございます。こんなに楽しくしゃべっちゃったものがネットに出ちゃっていいのかしら、と今、私、心配で。
心配無用です。荒井さんの知性とパッションと行動力、すべてがガンガン伝わってきました。勉強になりました。これからも、公私ともども一緒に楽しみましょうね。有難うございました。