佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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富永誠一さん

特定非営利活動法人 全国社外取締役ネットワーク 事務局長

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確かに女性が4名いると

佐々木

アメリカで取締役会についてのディスカッションに参加すると、女性が3人の取締役会はダメで、4人になって初めて声が取締役会に伝わると言うんですね。社外取締役の存在意義は、決定にどれぐらい関われるかが重要で、女性がマイノリティでい続けるか、影響を与えられるか、人数がポイント。その境が3人と4人だと。

富永

取締役会全体が10人に満たない会社だと、確かに女性が4人いるとCEOを除くと半分近くになりますから影響力は大きいです。数の問題はとても重要で、社外取締役の議論でも少数派の1人や2人ではなかなか発言が出なかったものが、3人くらいになると急に発言が活発になるようです。

佐々木

はい。でも日本なんて女性の取締役が1人もいない企業も多いです。

富永

取締役に女性を割り当てるクォータの議論が欧州を中心に進んでいます。ノルウェーでは取締役の4割を女性にしなければいけない規則がある。できなければ上場廃止ですよ。フランスでも上場企業は女性取締役の割合を3年以内に2割、6年以内に4割に引き上げることが決まりました。クォータ、強制ではありませんが、イギリスでもFTSE100という代表的な企業で、今年2月以降半年間に指名した取締役のうち、女性の割合は3割に達しているそうです。日本では女性の取締役は全体の1%台ですから、相当な後進国であることは否めませんね。

男性を含めても、社外取締役が1人もいない上場企業は約半分です。独立した立場の社外取締役が何人かいる、そして女性が相応の比率がいた方が絶対にいい。でも、先ほど言ったように、男社会では、取締役というポストに対するこだわりがあることと、取締役と執行役員の役割が混同しているので、社外取締役や女性取締役を積極的に受け入れるようになるまでには相当時間がかかりそうです。

佐々木

そうすると、やはりガバナンスをよくしていくための教育が必要だということでしょうか。今日の有能な経営者はガバナンスをよくしよう、社外取締役もなるべく迎え入れようと思っていらっしゃると思いますけど、それには時間がかかる。となると、今日の課長さん、部長さんに向けて、執行役員がゴールなのだと明確に伝える。同時にガバナンスの授業も年1回は行い、毎年、あなたの目指すところはここ、と執行役員であることを明確にし、取締役とは、大きな落とし穴に落ちないように、事前に気づかせてくれる人だと伝える。

富永

そうですね。コーポレート・ガバナンスというのは、すごく根が深い問題で、結局、教育の話にまで進んでしまうんです。僕は10年くらい会社員の経験がありますが、課長やその手前の研修ではそんな話は1度も出てきませんでした。財務会計とか経営戦略、マーケティングといった研修はあっても、「コーポレート・ガバナンス」という言葉が出てきた記憶はない。でも、上場会社のそれなりのポストを目指している人にとっては、コーポレート・ガバナンスは株式会社の本質を理解するために必須ではないかという気がします。

佐々木

今のMBAにはコーポレート・ガバナンスは入っているのですよね。

富永

入っていますね。コーポレート・ガバナンスという授業はなくても、コーポレート・ファイナンスやリスク・マネジメントの中に組み入れられていると思います。MBAでなくても、ガバナンスの先進国では、大学をはじめとした教育機関にエグゼクティブの教育プログラムが用意されていて、その中でコーポレート・ガバナンスは重要なテーマになっています。僕たちの全国社外取締役ネットワークでは、ガバナンスの教育プログラムを2003年から始めていますが、日本ではかなり早い取り組みといえるでしょうね。

最近になって日本の社会人大学院、ビジネススクールから声がかかって、ゲスト講師としてコーポレート・ガバナンスや社外取締役について話をする機会が増えてきましたが、そこで学んでいる30歳から40歳ぐらいの人たちからはすごく活発な意見や質問が出ます。うれしいことですね。


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