企業の経営状態がいいと、配当金が増える。そうすればその企業の評価が高まり、株の値段が上がる。ということは、株の値動きを見て、安いときに買い、高くなったときに売れば利益を得られるはずです。
しかし、「それはあくまでも理論上の話」という池上さん。理論より世論や投資家たちの「思惑」が左右するという株の値段について、さまざまなキーワードで読み解いていきます。
「これから配当金が増えると発表された株を喜んで買った途端に、株価がドーンと下がった、ということがあります。初心者によくある失敗です。
実はすでに、配当金が多くなると予測された段階で投資家が買い始めているんです。そうすると、株の値段が通常は上がります。配当金が上がると発表された段階では、ものすごく上がっているはずです。
そこで『予想通りになったな。もうこれ以上は上がらないよね』ということになり、一斉に売る人が出ます。そのため、株価が下がるのです。これが『織り込み済み』といわれる反応です」
安倍さんの政策が失敗しようが成功しようが、そう思っている人たちがいっぱいいるだけで本当にそういう動きになるんですね。みんなが予測することによって、それが実現する。これを『予言の自己実現』と言います。
衆議院選挙の結果が出たところで、今度は織り込み済みということで、株価がドーンと下がるんじゃないかと言われていました。しかし予想以上に自民党が大勝し、しばらく安倍さんの地位は堅いものになるとなった途端、さらに上がったんですね。本当に予測がつかないんです」
「一般論ですが、どこかの会社が新たに株を発行すると発表した場合、その段階で、その株は下がることが多いということはとりあえず知っておいた方がいいですね。なぜそんなことが起こるのか。
例えばそれまでは1000万株だった会社が、さらに500万株を発行します。市場に出回る株が1500万株になると、株を買いたい人に対して、株の数の方が多くなります。すると需要と供給の関係で、株の値段が下がるんじゃないかと思った人たちが売っちゃうんですね。予言の自己実現で、株価が下がるということです。これを株の『希薄化』という言い方をします。
ただし長期的にみれば、新しい仕事をやろうとしているということはおそらく経営状態がいいので、この株が上がっていく可能性も高いといえます。これも一般論ですよ」
「株価全体が下がり、これは心配だ、株を持っていても儲からないとなると、そのお金で『社債』や『国債』を買おうという動きが出てきます。そういう投資家の動きを『質への逃避』という言い方をします。質のいい方に逃げていくということですね。
社債は大手企業が銀行を通さずにする借金です。証券会社に手数料を払って社債を発行し、これを投資家に売ります。国債、つまり国の借金も同じこと。国債を発行して、それが売買されているんですね。
例えば国債が株よりも安全ということになると、国債の流通価格が上がり、金利が下がるということがほぼ同時に起こります。株価の上下はいろいろなところで連動して、経済にさまざまなことが起きてくるんです」
「アベノミクスの話にいきましょう。日銀が、消費者物価が2%上昇するまで金融緩和を進めると言いました。そうするとみんなが、“期待”を抱きます。いい期待も悪い期待もあるわけです。
そしてどうするかというと、今のうちにものを買おうという人が増える。すると企業の利益が増えるので、社員の給料を上げるところも増えてくるでしょう。それによってお金が世の中に出回り、景気が良くなってくる。これがアベノミクスの理想型ということです。2パーセントにすると言ったのは、このように『人々の期待に働きかける』ということなんです。
いろいろなものが上がると、『株も上がる』とみんなが期待するようになる。今、株が上がっていますね。さらに最近、土地の値段も上がり始めています」
※ イー・ウーマンサイトの関連ページ
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