特集 表参道カレッジ 講座リポート 池上 彰氏に学ぶ「投資って何?」講座「+YOUニッポン応援全国キャラバン」特別編

REPORT

  • 01 はじめに…そもそも「株」って何だろう?
  • 02 株価を動かすのは、理論より「思惑」?
  • 03 株をもつことで学べること、見えてくること
  • 04 生活に支障が出ない投資を、「自己責任」で

03 株をもつことで学べること、見えてくること

株から経済、政治にまで及ぶ池上さんのお話。みなさん、メモを取りながら熱心に聞き入っています。投資の奥深さ、面白さが見えてきました。

「1つの株を持っていると、その業界についての関心が非常に高まってくる。それが経済の勉強になっていきます。自分の持っている株が何で上がったのか、何で下がったのか。そのたびにいろいろな解説を読むことによって、社会に対する目が大きく開かれていく、視野が広がっていくという、大変なプラスの面があります。人間心理の洞察力ということも含めて、実は学べることがいろいろあるのです。
また、株式市場での売買が活発になっていれば、会社が新しく株を発行しやすくなる、つまり資金を集めやすくなります。新たな仕事を始められることで雇用も増え、日本経済が元気になっていきます。このようにみなさんが株式投資をすることで、回り回って企業の応援にもなっていくということですね」

池上 彰氏に学ぶ「投資って何?」講座の様子

会場のみなさんから、池上さんへの質問

ここで、池上さんへの質問タイムが設けられました。さっそく多くの方の手が挙がります。

── 円安は、どのぐらいまで進むと予想されますか?
「私は相場師じゃないので、予想はしないんです。現在のところは、安倍さんのブレーンであるイェール大学教授の浜田宏一さんが、1ドル100円まではいいと言っています。浜田さんの本を読むと、『期待に働きかける方が大事』だと。1ドルは100円まではいくんだという期待を、彼はつくったということです。私はあくまで解説しているんですからね。予想を言っているわけではないです」
── 日本の今の株式市場が海外の投資家に支配されていて、日本の個人投資家が出る幕がないのではないかという報道のされ方をしているのですが、海外投資家が日本株を買いたたくということはどういうことなのでしょうか?
「これは簡単な話です。日本の個人投資家がものすごく消極的になっていて、日本の株式市場を信用していない。海外の投資家は、日本経済はまだまだいけると思っているから、これは有用だと思って、たくさん株を買っている。結果的に、日本の株の売買の多くの部分を外国人の投資家が占めているということです。日本の投資家がもっと自信を持って株式市場で株を売買するようになれば、今度は日本の投資家によって、日本の株式市場が左右されるようになるということですよ」
── 企業が株を追加で発行したときに、例えば500株を出して、100株しか買われず、400株が残ったときは、どのようなことが起きるんですか?
「企業は、株を勝手に売り出すことはできないんです。必ず管理会社、証券会社を通じて売り出します。証券会社が『お宅の会社で500万株を売り出したいと言っても、ちょっと十分には売れないかもしれない。400万株にしなさい』とアドバイスを出すんです。実は証券会社はそういう仕事もしているんです」
── 上場と非上場、それぞれのメリットとデメリットについて教えてください。
池上 彰氏に学ぶ「投資って何?」講座の様子「上場というのは、一般に開かれている、誰でも売り買いができるというメリットがあります。しかし、そのためには内容を全部オープンにしなければならない。会計事務所、公認会計士にちゃんと見てもらって、利益がどうなるかわかれば投資家に公開する必要があります。それだけ社会的な責任が大きい。
非上場ということは、一般に向かって開かれていないものですから、いろいろなことを明らかにしなくていいんです。そのために透明な形の価格の取引は非常に難しく、詐欺の舞台になることもあります」
── 先ほど、円安が進む要因のひとつとして、今日本では原発が止まっているので、電力会社が海外から火力(燃料)などを買わなければいけないというお話がありました。今後さらに円安が進んだ場合、「原発を動かして安定的なエネルギーを得るしか、円安を止める要因はない」となりかねない。このように原発が使われる恐れがあるということでしょうか。
「その通りです。この前の選挙で、自民党は景気対策が一番、原発は争点じゃないという戦略で勝ちました。だからみんなは景気の回復に期待をしているということになります。そうなると、原子力発電所を動かさないからこんなに貿易赤字が増える、だから安全なものは動かす必要があると言い始めることになるんだろうという予想もできますね。経済が分かると、このように何が起きるかも予測できるということです」
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