佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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野口聡一さん

宇宙飛行士


ネットが繋がったって、すごいですよね。

佐々木

国際宇宙ステーションISSでの161日間の生活では、どういうものとの葛藤になるんですか?

野口

161日間というと長く聞こえますけど、実際には1日1日の積み重ねで、極端な話、長かったのは最初の1日なんですよね。やっぱり着いて1日目が、とりあえず宇宙ステーションに着いた、と。で、ワタワタと準備をして、寝床を作って、みたいなので、それはそれで、あっという間に時間が過ぎているんですけれども、ふと考えると、3年間訓練してきて、やってきて、さあこれから何をしようかっていうところで、ポッと空いちゃう感じが、逆にあるんですよね。だから最初に1~2日というのがすごく長くて、結局、たとえば食事をするにしても、顔を洗ったり、トイレに行ったりするにしても、いちいち時間がかかるわけですよね。慣れていないから。

佐々木

何となく、それは要領を得ないみたいな、新しい住みかの場所を認識したり、手順を自分の中に取り込んでいく時間。

野口

要領が悪いな、と自分で分かるんですよ。そこが、「こんなんで大丈夫かな」みたいな。でも、それでペースをつかんでしまうと、本当に後半は早いというか、それだけ楽になっていますよね、自分で動くのが。そうすると、あっという間ですね。

佐々木

私は、野口さんとの最初の関わりがツイッターでした。「え? これ、本物の野口さんから来ているの?」「宇宙から届くの?」「宇宙ステーションからの人と、こんなことができるの?」っていう驚きがあって。で、野口さんが「もうすぐ日本の上空を通ります。手を振ってください」ってツイートされると、私、本当に手を振っていましたから(笑)。この技術の革新ってすごいなあ、と。本当だったら、ものすごく孤独な時間なはずなんだけれども、でも当然、たくさんの孤独を感じられるのかもしれませんけれども、でも、ツイッターができて、たぶん世界中から、あれは皆、「手を振っています」とかってツイートの返信が来ているのをお読みになろうと思えばなれるわけですよね。電話もできたりしていらっしゃったんですよね。何年か前の宇宙ステーションでの滞在とは、随分違うんじゃないか、と。

野口

随分違うと思います。それはもう本当に仰るとおりで、ネットが繋がったって、すごいですよね。めちゃくちゃ大きいですよね。たとえば6年前、私が最初に宇宙に行ったころは先輩飛行士から「宇宙ステーションの任務は単調さに耐えることだ」と聞かされてました。当時は宇宙ステーションは2名体制でスペースシャトルも止まっている時期だったので、誰も訪問者がいないんですよね。だから半年間、もう一人の人間にしか会わないっていうミッションが続いていたので、きっと仙人のような生活と思います。それに対して、今はまず6人体制でしょ。で、スペースシャトルも私のときは半年間で3機来ましたからね。1月おきにお客さんが来るっていう感じで賑やかでした。賑やかすぎてお客さんはもういいよっていう感じも、ね。

佐々木

何だか普通の家のホームパーティーみたいな頻度。

野口

ありがた迷惑っていうか、ぜいたくな悩みかな。来て嬉しくて、帰って嬉しいっていう、そういう感じですね。でも本当に、ダイナミックに変わっていくときで、そういう意味じゃ、すごくラッキーだったですけどね。全く退屈する間がないという。


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