佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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野口聡一さん

宇宙飛行士


一つのものに対して多面的に見られるような人になってほしいな

佐々木

子ども達の教育のことをお伺いしたいんですけど、まずは、ご自身のお子さん、3人いらっしゃるお子様方への教育方針みたいなものとか、家の中のルールとか、そういうものはありますか。

野口

とにかく、いろんな世界を見せてあげたいなというのは、いつも思います。というのは、僕自身はずっと日本で生まれ育って、外国とかも、そんなに行った経験がなかったんですけど、でもたとえばボーイスカウトのような活動をしていて、学校以外の世界を知っていたっていうのは、すごく大きかったと思うんですよね。うちの子達はアメリカに今住んでいますけど、日本にも時々帰ってきて、日本という国とアメリカという国で、それぞれにいいところがあって、友達もそれぞれにいて、違う世界がある、違うものの見方がある、というのは吸収してほしいな、と。で、それと同じように、世界には、それ以外の国、ロシアもあるし、アフリカの国もあります。だから、一つのものに対して多面的に見られるような人になってほしいな、というのはすごく思います。

佐々木

英語教育については、いかがですか。お子様方に関しては、アメリカに住んでいるから英語は問題ないと思うんですけど、もうちょっと日本は英語教育を何とかしなきゃって仰っているコメントも拝読しました。日本の英語教育について、あるいは英語だけじゃなくて、多面的な視点、ということで日本のこれからの子ども達や若者達に、何か伝えたいことがありますか?

野口

英語は、単に受験科目という意味ではなくて、まさに多面的なものを見るためのツールであると思うんですよね。言葉は単なる記号ではなくて、思想なり考えの表れであって、たとえば言葉を学ぶことで、その背景なり歴史なりを学ぶ、あるいは一つのことをどう表すかで、そこに持っている考え方というのが自然に出てくるわけじゃないですか。英語を学ぶことで、その後ろにある文化とか考え方とかを学ぶ。異文化理解の第一歩が語学学習だと思います。

佐々木

視点の置き場が違うとか、そういうことですよね。

野口

それを吸収していってほしいな、と思います。

佐々木

それを日本の教育の中では、どうやったらいいんでしょう。この学校教育の中でね。

野口

ツールとしての言葉の英語を学ぶだけでは足りないわけですよね。その後、じゃあ、英語を使って何を学ぶかというところで……。どうすればいいんでしょうね。

佐々木

私は日本で育ったんですが、上智大学の比較文化学科(当時)という全部授業を英語でやるところに入学したんです。海外旅行さえ一度もしたことがなかったのに。そうしたら、最初の英語の授業、つまり国語の授業が作文で、目覚まし時計か何かについて4つの視点で書いてきてください、というんですね。一つは、これを「観察」という書き方、一つは、「定義付け」という書き方、一つは「分析」という書き方など、それぞれ200ワードって言われたときに、仰天してしまって。日本語でもそんな作文を書けって言われてこなかった。日本の国語教育でも、作文といったら感想文か日記だった、なんて思いました。今となっては、簡単なことですが、英語を学ぶというのは、こういうことが体験できて面白いな、と思ったんです。

野口

それは視点を身につけたからですね。

佐々木

でもなかなか日本の教育の中にそういう仕組み、多様な視点で物を考えるということの自由度とか枠を外すって教えてくる機会が少ないように思えるんです。

野口

それが閉塞感ですよね。


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