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すごく生きますよね。東京なんかだと、ハワイの海岸をきれいな女の子がビキニで走ってにこやかに商品名を言う、みたいなCMになるわけですよ。そんなのは関西ではあり得ませんから。そんな格好いいものじゃないよね、商品って。商品は、人間の上に来るものじゃなくて、人間の下に来るもの。人間が使ってあげるもの。そういうのが徹底しているんです。たとえば、大阪のおばちゃんっているでしょ? 「何や! 何や!」みたいな、騒がしいおばちゃん(笑)。ああいうおばちゃんたちにばかにされるようなCMを作る。で、「何や? あのCM、くっだらへんなあ」って彼女らに笑われる。そこからすべてが始まるんです。そこでようやく向こうが親近感を持って、商品のことを覚えてくれたり、興味を持ってくれる。大阪では180度違うんです。
その中で磨いたコピーライターとしての技術が、今も使える技術、なんですね。
その大阪の技術というかアプローチはすごく参考になりました。僕は格好いいコピーを書いていたんだけど、「お前のコピー、つまらんなぁ。笑えへんし」って言われちゃう。だから、そこが、まずできなかったんですね。だけど、だんだん、人の心に隙ができるってこういうことなんだとか、わかっていく。
それ、教えてほしい。人の心に隙ができるって、どういうこと?
要は、広告って、自分が他の何かをやっているときに、関係なく流れてくるじゃないですか。もしくはドラマを観ていても、CMタイムになると皆、頭をオフにして、まったく興味がないわけですよね。興味がないときに興味を持たせるっていうのは、その商品がいくら格好いいこと言っても、興味自体がないから、自分に関係ないこととしてスルーするんです。そうじゃなくて、ばかみたいに笑わせるとか、くだらないとか、そうやって人が虚を突かれるような表現とか、心の隙をふっと突かれると、「何?これ」っていう。
テレビの画面に、ふっと振り向かせるとか。
振り向かせたり、ぼやーっとしているのに、「ん?」って見ちゃったりする。目立つのがいいってわけじゃないんです。人が、ふっと見ちゃうという、心の隙。バリアが解けるみたいな。「そんな商品、自分に関係ないもん」っていう気持ちが解けるみたいなね。
広告の技術とか、伝える技術が高まってくると、商品が何であってもできるんじゃないかと思うんです。たとえば商品技術としてはAが高くても、実はBがバカ売れするっていうことになるわけですよね。広告マンがいいと、売れるキャッチができて。
アプローチの入口を全然違うところに持っていったりしますからね。商品スペックがどうのって問題じゃなかったりしますね。