佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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佐藤尚之さん

コミュニケーション・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

講演依頼について問い合わせをする

講演、1年に150回やっているんですよ

佐々木

「国民と政治の距離を近づけるための民間ワーキンググループ」の関係で一緒に政治の話をしていたときにも、「同じことを言うんだったら、プレゼンとかデリバリーの技術って、すごく重要だよね」って政治家たちのプレゼンテーション研修したいと、一緒に話しましたね。

佐藤

すさまじく重要ですよ。

佐々木

政治家も、企業人も、中身は一番重要ですが、それがどんなふうに人に伝わっていくかっていう、表現方法や言葉選びも重要。

佐藤

大事ですね。だから講演とか、最近すごく増えているんですけど。

佐々木

あ、年150回って見ました。

佐藤

そう。講演、なぜか最近増えていて、1年に150回くらいやっているんですよ。自分でも理由がよく分からないんだけど。で、他の人はどうやっているんだろうって、少し意識して人の講演とかを聴くようにもなって。それまでは、1~2時間の講演だったら、相当内容を詰め込まないとダメだと思っていたんですけど、他の人の講演を聞くと、意外と大したことを言っていないんですよね。でも、すごく引きつけているんですよ。「あ、なるほど、それでいいんだ」って。1個か2個、上手に引きつけて、表現で人の心をつかむのが大事なんですよね。同じことを言っているのに、全然違うアプローチと入り口と引っかけ方をしている。これもCMと一緒ですね。

佐々木

だから、講演って始めると面白いでしょ。

佐藤

面白いですけど、僕、しゃべりが下手なので、とにかく不得意分野だったんです。もう5年ぐらいやっていますから、場数を踏んで、だんだんできるようになりましたけど。でも、毎回すごく勉強になるんです。成長途上です。

佐々木

東京と関西でも、お客さんの反応も違うでしょう。東京のお客さんには表情を変えない人がいるから、伝わっていないのかなって思うと、そうでもなくて、フィードバックシートには「すごくよかった」って。「それなら途中でそういう顔をしてよ」って……。

佐藤

「もっと反応してよ。こっちは寂しいんだから」ってね。関西はすごく分かりやすいです。

佐々木

もっと伝わる言葉をひらめきたい、と思った時、どういう勉強法がありますか。どうやって感覚を研ぎ澄ませていったらいいんでしょう。

佐藤

いやー、ボクはもともと劣等生なんで、偉そうには言えないけど、まず「伝える」っていうよりも「伝わる」ですよね。「伝える」っていうのは一方的なことですから。で、伝わるためには、たとえば文章にも2個あって、連絡文や報告文みたいな事務的なものと、小説やコピーみたいな創作的なものがある。前者はわかりやすければいいですが、後者の文章は共感を得ないといけないと思うんですよ。「伝わる」ためには「あー、そうか!」「なるほど、そうだよね!」みたいな共感が絶対必要。で、そのためには共感がどこでどうやって起こるかを知っておかなければならない。

ボクはそのポイントは「人間はもともとすべてにおいて違うから寂しい」という意識が大切だと思ってるんです。100人いたら100人全員、生まれも育ちも違うし、顔も性格も経験も違う。「今日は暑いね」という誰でも共感出来そうな言葉だって、「いや、それほどでもない」という人もいるし、「このぐらいの暑さがちょうどいい」っていう人もいれば、「被災地はもっと暑い」とか怒る人もいる。

絶対共感できそうな「今日は暑いね」っていう言葉でも、共感されるとは限らない。人はみんな違う。絶対わかりあえない。その寂しさがあるから、だからこそ人は「自分と似た部分を他人の中に探そうとする」んだと思います。

その、自分と似た部分を探してもらうためには、「自分を出す」しかないんです。結局、自分だけの考えとか、自分しか思ってないことを他人におもねないでしっかり前面に出す。そうすればするほど、人はその中に自分と似た部分を探しに来てくれて、共感してくれる。 違うのが寂しいからこそ、必死に似た部分を探して受け入れてくれる。

佐々木

違うからこそ受け入れやすい、忘れにくいってことですね。


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