佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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荒井由希子さん

国際労働機関(ILO)ジュネーブ本部
多国籍企業局 シニア・スペシャリスト

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国のレベルの政労使三者が合意をして前に進むという形なので

荒井

ですから、リサーチをする間にも、なるべくいろんなメカニズムを作る。ビリヤードに例えて言うと、いかに一つのボールを突くだけで、パーンと数多くのボールが全部に広がるか、というのを考えながら構築していく。いろんな国レベルで、リードパーソンとか、リードファームとか、いろいろ見て、どの人とパートナーを組んだらいいか、どこをつなげていくのがいいか、そういうのもリサーチの段階で考える。それにより、一つの報告書をきっかけに、フォローアップが国レベルのアクターたちによって持続的に行われるようにする。よく、我々の出版物とかリサーチというのは、やって、きれいに書棚に飾られちゃうことがあるんですけど。

佐々木

学者や専門家だけが見る、棚に入ったリサーチブックになるのではなくて、実際に使われるルールやデータを提供しよう、と。

荒井

そうです。いろんなレギュレーションとか、モデルを計算したりした感じのアカデミックリサーチとはかなり違う、行動につながるような、または国レベルの方が使えるような情報と今後につながる提言とかも入っていたり。

佐々木

重要ですね。分野は違いますが、私たちは、企業理念の見直しのコンサルをお受けすることがあるのですが、理念が飾りでなく、毎日の仕事に反映されるようにしていくんです。何でも、使われなければ意味がないですからね。

荒井

国際労働基準もそのまま読むとかなり難しいリーガルの文章なので、それをいかに噛み砕くか。たとえば若年雇用だと若年がターゲットだし、コミュニティの児童労働だとコミュニティの人がターゲットだから、もうちょっと普通の、分かりやすい言葉に噛み砕いていきます。そのプロセスにおいて、トレーニングじゃなくて、awareness-raisingといいますが、意識の向上、啓蒙活動みたいなものをして人々を巻き込んでいくことも、リサーチのプロセスの中に組み込まれるんです。

佐々木

国を動かすというか、ときには国のルールまで変えなきゃいけない、あるいは国の慣習やしきたりみたいなものに踏み込むこともある、ということですか。

荒井

私たちの仕事は国づくりを一緒にやらせていただくということで、関係する法律や政策は、専門的な見地からレビューします。ただILOというのは、社会対話、ソーシャル・ダイアローグをすごく重視するので、我々が、こうです、というのを提示するのはしない。アセスメントとはするし、提言は出すんですが、結局、国レベルの政労使三者が合意をして前に進むという形をとるので、カルチャーを変えるといっても、我々が変えるんじゃないんです。テクニカルブローカーみたいな感じだと思うんですが、我々が、さっきのaction-oriented researchでもいいですけど、それをインプットとして、ダイアローグの場を設けても、結局決めるのは国の方々ですから、あくまでも私たちはそれに加わる形ですね。


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