佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

153

荒井由希子さん

国際労働機関(ILO)ジュネーブ本部
多国籍企業局 シニア・スペシャリスト

講演依頼について問い合わせをする

お父さんと子どもが一緒に鉱山に住んでいるわけです

佐々木

でも、こういう10歳前後の子どもが、金鉱山でマイナス40度の中で過酷な労働をしている、ということは、子どもたちは、人権も何もなくて働いているわけじゃないですか。ILOの人が行ったら、「写真はダメです。この子を撮らないでください。話はさせますけど」っていうふうに、隠したいんじゃないかと思うんだけど、そうではないんですね。国連の機関の人が来て、インタビューしているのに、知事まで一緒ににっこり隣に立って記念撮影をするって、驚きました。

荒井

もともと児童労働問題とかインフォーマルのマイニングの問題というのは、この州知事さんにとってもかなり懸念の事項だったんです。我々も児童労働の撲滅に力を入れている、と。また、ここは、ILOのプロジェクトが展開される場所と決まった後だったので、既に私たちとも協力関係が築かれていたわけです。児童労働の撲滅というのは、児童を職場から取り除いて学校に入れれば終わりというのではなく、親の収入機会、または収入が得られるようなスキルを得ることとか、コミュニティ自体の経済開発とか、子ども、というフォーカスを越えた、多角的な取り組みが必要なんです。

そういった話し合いが始まっている中で私たちが来たわけですし、州知事さんもお父さんと子どもの事は、良く知っているんですね。ですから、じゃ、どうしようか、と。児童労働モニタリングのシステムも、単なる状況の監視・報告だけではなく、改善をもたらす様々な策とセットにして築かないといけません。なので、みんなで話しあって一緒に考えるのが鉱山を訪れた目的です。

佐々木

このお父さんは、子どもだけを労働に出しているんですか。

荒井

一緒に働いているんです。お父さんと子どもが一緒に鉱山に住んでいるわけです。その他の家族は麓の村に住んでいます。ただ、あまり教育制度が整っていないということもこの子が学校に通うことができない一つの要因ですよね。教育制度の充実、教育機会の普及のほかに、子供を取り巻く環境を広い視野から見て、根本的な原因に対処していかないと、こういった子たちはいつまでも学校に行かれません。で、写真を撮ったのは、こういう子たちってあまり写真を撮ったことがないからなんです。

佐々木

あ、そうですね。この写真を送ってあげると大喜びでしょう。私も南アフリカなどで取材しているとき、皆に「撮ってください」って言われました。でも、その時は、村々を歩いている子どもたちだと、住所がなくて。でも、この親子になら送ってあげられるから。

荒井

そう。現場の様子をカメラに収めていたら、僕も、ってこっちを見てたの。よく「写真を撮って」と言われるんです。こちらも面白いので1枚お持ちしました。あまりにも私が学生たちに囲まれて動けない状態でいるので、「モテモテじゃない?」とニヤニヤ笑いながら同僚が撮ってくれたスナップです。

これはコスタリカの学校でスピーチをした後に、「日本人です」という話をしたら、「日本語で名前書いて!」って次々に頼まれて。どこの国に行っても、日本っていうのはいい国だ、と言われます。「何が好き?」って聞くと、「車はすごいし、食事もおいしいし、日本人はいい人たちだ」って。「日本人です」といって嫌な目に遭ったことがないです。


上:モンゴルの鉱山にて
下:コスタリカで生徒たちの「名前を書いて」攻撃にあう

  • 14 / 25


バックナンバー

過去の一覧

ページの先頭へ