佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

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富永誠一さん

特定非営利活動法人 全国社外取締役ネットワーク 事務局長

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一番重要な機能は質問権

富永

社外取締役の一番重要な機能は質問権だという人がいます。僕もその意見に賛成です。事情を知らないから素人質問ができてしまう。社内の取締役がそんな質問を取締役会の場でしたら、「お前は何を言ってるんだ」となりますからね。的外れな質問ばかりして、取締役会を躍らせてしまうのは問題ですが、各分野で高い経験を積んできた人たちが素朴に世間一般の視点で質問することは、極めて大きな機能だと思うんです。

佐々木

社外ネットにいらっしゃっている方は皆さん、熱心で、自分を高めようとしている役員だと思いますが、何か一つを指摘すると、どんな力が必要だと思いますか。専門性や知識でなく、姿勢のような点で。私は、僭越ですが、やはりダイバーシティ、多様性の理解と実践ではないかと。

富永

そうですね。これはダイバーシティにも通じますが、会社や業界の常識にとらわれない視点から切り込み、異なった考え方の提供ということが大きいのではないかと思います。しかし、まだその手前に問題があって、あくまで一般論ですが、社外取締役の側に遠慮があるような気がします。ここまで言ったら申し訳ないのではないかな、という遠慮。

佐々木

そうですね。その会社での経験や知識を自分以上に持っている人に「何かそれは違うんじゃないですか」と言うのはよほどの確信がないと言いにくい。

富永

だからこそ質問力が大事。でも適切な質問をするのは難しいと、よく聞きます。やはりこういったことには訓練が必要なのかもしれません。ディベート能力にも通じるような。

佐々木

あるいは相手に受け入れてもらえるような提案の仕方、話し方だったりするかもしれない。

富永

そこは若いときから培われていくもので、社外取締役になる年齢の頃には備わっていて欲しいのですが、そうした訓練を十分に受けていないので質問力が弱いと自認されている方もいらっしゃるのは事実です。

佐々木

それともう1つは社外取締役の割合と関係がありますよね。

富永

まさに、今言おうと思っていました。遠慮があるというのは、遠慮をしなければいけない環境があるということだと思います。日本で社外取締役が1名でも入っている上場企業は51パーセントですが、2名以上は2割、3名以上は1割です。数の問題はすごく大きくて、取締役会での監督機能を発揮する前提になる、取締役会の議論の活性化という観点でのクリティカルポイントは3名だと社外取締役を務める方々は皆おっしゃいますね。

佐々木

取締役会の全体人数は、どのくらいなんですか?

富永

きちんとしたデータは持っていませんが、上場企業で平均10名ぐらいでしょうか。

佐々木

10名、それで3名。

富永

3割。そうなると、取締役会の風景が変わると思います。1名だと難しい。2名でもまだ少数派です。しかし3名いると、社外取締役同士で情報交換ができるようになってくる。特に仕掛けをつくらなくても、自然発生的に生まれてきます。そうなったらしめたもので、社外取締役が一致団結をして、「言うべきことは言おうじゃないか」となれば効果絶大でしょう。

だから「社外取締役は最低3名必要」と僕たちも声高に言い続けているんですけど、3名以上導入しているのは全体の約1割ですからね。これは法律上の社外取締役なので、独立性は考慮していない。独立性を考えると、もっと低い割合になりますから、そこまで到達するにはまだまだ距離があります。ただ、そこで逃げてしまってはいけないので、「社外取締役が機能するためには、独立性の問題をクリアして、社外取締役の人数を確保していく必要がある」と訴え続けています。さらに、取締役会を業務執行を決定する機関としてではなく、もっと大きな場に位置づけていくことも必要だと思います。

佐々木

例えば?


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