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世界経済フォーラム 男女格差・人材部門、シニア・ディレクター
次に多くの研究・調査の結果から、企業や組織においては、意思決定をするメンバーが多様性に富んでいるほど、よい決定が出せるということが分かっています。つまり男女のバランスが取れているチームのほうが、バランスのとれた良い決定を導きだすことが出来るということです。男性だけ、あるいは女性だけのチームでは最高の決定を導きだせないために、男女のバランスの取れたチームを作ることの経済的効果は実に大きいのです。
よくわかります。わたしも講演、研修、コンサルティングと、あらゆる機会において、ダイバーシティ、多様性を活かした決定プロセスが企業経営を強くすると話してきています。もちろん、男女だけでなく、あらゆる多様性です。それも、ただチームメンバーに女性を入れるのではなく、多様な視点が決定プロセスに含み入れられる、ということが重要だと。
そうです。その通りです。最近では、男女のバランスの取れたチームを作るメリットだけでなく、女性が企業の意思決定に果たす役割が注目されてきています。女性はより長期的な視野でものを捉え、常にリスクを減らそうとしますが、男性はハイリスクで短期的な収益増だけを考える傾向があるからです。
女性が男性より優れていると言っているのではありません。ただ、男女の考え方の違いを活かして上手にバランスを取った決定をすることが、企業にとってはベストになるのです。経営上層部における女性の数の増加が、企業力の向上につながっていることをデータで示す資料や研究もたくさんあります。
多様性が高い企業のほうが、企業の経営力が高いことを示す様々なデータや資料があると言われましたが、そのなかでもっとも決定的だと思うデータを教えてください。
米国カタリスト協会が行った調査では、経営上層部にいる女性の数と、企業業績の間に強い相関性があることが分かりました。ただし、強い相関性が見られたのですが、その因果関係を証明することは不可能なんです。
男女格差がない企業のほうが高い収益をあげているということはまだ言えないでしょう。高い収益をあげている企業のほうが、雇用や昇級における男女格差をなくす努力をしているだけだ、とも言えるだろうからです。
あえて質問したのは、そのような数字に裏打ちされたデータ・資料をなかなか見つけることができなかったからなんです。
因果関係の証明は今は不可能です。データから見えて来るのは、あくまでも両者の相関性です。