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ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター
午前の部を締めくった講演者は、ボストン・コンサルティンググループの秋池玲子さん。産業再生機構において経営破綻の淵にたった企業の経営再建を次々と手掛け、一躍有名になりました。今回は「事業再生から学ぶ、企業・組織・経営」と題し、ご自身が手掛けた具体的な案件事例に照らし合わせ、優良企業か、再生が必要な企業かにかかわらず、どの企業でも起こりうる課題、そこに対してどう取り組むか、講演を行いました。
秋池さんは、2003年当時大手コンサルティング会社に在籍していましたが、機構の発足を新聞で知り、すぐに興味を持ったといいます。機構に入って最初に手掛けたのは、地域インフラを支える熊本県のバス会社。周囲には再生を疑問視する声も強かったなか、「この会社には唯一無二のものがあるから、それを中心にビジネスを組み立てていけば必ず建て直せるはずだ」と信じ、再建計画を実行。地域住民にも深刻な経営状況を開示して残す路線、廃止する路線を選んでもらうなどして計画を進めたそうです。結果、人員に関わる部分にはまったく手をつけずに見事黒字化を果たした流れを具体的に述べられました。
この会社は非常に成功した再生事例となり、これを参考に全国20数件の路線バス会社が再生に取り組んでいるとのことです。また、秋池さんはこの取り組みを通じて日本の産業構造を見直すきっかけが生まれ、「枠組みを超えて知恵が伝播していくことで、日本もまだまだ発展の余地があるのではないか」と考えるようになったとも語ります。さらに、経営再建が必要な会社の3つの共通項や、それらが原因となって引き起こされる、経営危機に至る事象を説明。また建て直しの時に行う施策や、経営に直接関わっていないスタッフでも、チームで仕事をするうえで活用できるポイントなどをいくつか説明されました。
講演の最後に、「ひとつ成功事例ができると世の中の見方が一気に変わる。成功のモデルをつくることにチャレンジしてほしい」ということと、また、「会社での成功事例としての存在である参加者の皆さんから影響を受けている人は多く、その波及効果はとても大きい」「ぜひ明るい気持ちをもって取り組んでいただきたい」と会場の参加者に語りかけました。穏やかな語り口ながら、ポイントを明確に示して語った秋池さん。会場の参加者の心には、まさに働く女性のリーダーともいうべき秋池さんからの力強く熱いメッセージが刻みこまれました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。