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(山口郁子 / 伊勢崎賢治 / エロック・ハリマー※ / 他)※ファシリテーター
ユニセフ東京事務所副代表の山口郁子さん、東京外国語大学教授で元アフガニスタン武装解除政府特別代表の伊勢崎賢治さん、ファシリテーターに川崎市外国人市民代表者会議委員長のエロック・ハリマーさんらを迎えて行われたのは、国際社会での日本の存在を考えようという分科会、「Making a Difference~日本の役割・発信力を高める」。英語での開催です。国際社会で活躍する講師たちの生の声を聞こうと、開始前から会場の空気が熱気を帯びるなか、講師の自己紹介と所属組織の活動紹介で分科会はスタートしました。
講師の自己紹介後、ファシリテーターを務めたエロック・ハリマーさんは、「日本の存在感が落ちている、と感じた経験について、仕事の面からとプライベートの面から、エピソードを披露してください」と、ディスカッションを開始。結婚後、ビザの変更に伴いフルタイムで働けなくなった事情など、時に日本の現行制度への疑問も織り交ぜつつ自らの体験を共有しながら、分科会を進行。また、現在の仕事に巡りあって感じた熱い思いを参加者に伝えてくれました。
山口郁子さんは、国連における日本の存在感が弱まることへの危機感を冒頭で述べ、その例として、日本のODA(政府開発援助)の減少について言及。例えばかつて日本は、ユニセフの政府ドナーとして世界2位だったにも関わらず、2009年実績は世界第6位。他方、政府と民間からの支援を合わせると、日本は世界第2位を維持。第二次世界大戦後復興期に支援を受ける側として始まった、60年に及ぶ日本人の想いの積み重ねが今に至っている、と説明。国際社会へ貢献する方法について参加者から質問を受けると「何をしているか」より「なぜやっているか」が重要であり、一人ひとり貢献の仕方は違って良いと語りました。
キャリアのスタートは建築家だった、という伊勢崎賢治さんは、戦争国での武装解除の経験とは逆に、非常に穏やかに、しかし時には聞く側の既成概念に挑戦するような視点・表現を使って、日本の立ち位置を語ります。80~90年代、リスク回避のために日本の企業や政府機関がアフリカから撤退してしまった一方、現在、中国と韓国がアフリカに進出し、政策を展開していると説明。今や、中国や韓国をライバルと見るのは得策ではなく、両国とうまくやっていくために新しい日本独自の政策を展開していくべきだと語ってくれました。
参加者からは、「どうしたら国際機関で働けるか」「どんな国際貢献の仕方があるか」といった具体的な質問に加え、国際援助活動は貧困を売り物にしていると主張する伊勢崎賢治さんに対してNGO主宰の女性からユーモアのある反論もあり、会場の笑いを誘いました。質問がなかなか途切れず、時間が延長されるという、参加者の意欲の高さが伺える分科会となりました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。