働く女性の声を発信するサイト『イー・ウーマン』
(竹村尚子 / 伊藤宏一 / 枝廣淳子※)※ファシリテーターピアのリポートを読む
2年前のリーマンショックからいまだ立ち直れず、政治の不安定、少子超高齢化など、その未来にも深刻な不安を抱える日本経済。これからも発展が可能なのか、どのような方向に向かっていくべきなのか。そもそも経済発展とは何か。日本の優位性とは……。
今回、「日本の経済は発展するのか」のテーマで熱く語ってくださったのは、千葉商科大学大学院 会計ファイナンス研究科教授で、「働く人の円卓会議」でも議長を務める伊藤宏一さん、ムーンライトキャピタル社長で、2001年にはForbes誌にて「世界のファンドマネージャートップ20」に選出された竹村尚子さん、そしてファシリテーターは環境ジャーナリストで翻訳者の枝廣淳子さんです。
分科会は枝廣さんの「日本経済は発展する必要があるのか?」という、分科会テーマとは逆説的な問いかけからスタートしました。伊藤さんは、江戸時代の経済的フレームワークがいかによく機能していたかを説き、GDPで経済発展の基準をはかる時代はもはや終わっていると述べました。また、ブータンのGNH(国民総幸福量)についても触れ、私たちは明治維新以前の日本のことを勉強すべきだと主張。江戸時代、東京集中型ではなく、地方が自立して経済が潤っていた事実を挙げ、日本の経済の枠組みを考えるモデルになるであろうと、熱く語りました。
竹村さんは、投資家の視点から、「今までの経済発展は、金儲けのための金儲け。地球や人を傷つける発展は、もう終わった」とした上で、「お金は大切です。お金は夢を実現するためのツール。目的になってはダメだが、増やすべきであり、そのお金を回すべき」と発言。バングラディシュにあるグラミン銀行のマイクロファイナンスの例を挙げ、ビジネスが生まれ、雇用が生まれることの大切さについて語りました。また、これからは、「子どもたちが夢を持てる世の中にしなければならない」、「日本人は世界でもっと自信を持つべきだ」とご自身のグローバルな体験から得た信念を語りました。
枝廣さんは、伊藤さん、竹村さんの話に補足する形で、「人を幸せにする経済はどんどん発展したらいい」と述べ、「私たちはどこに明るさを見つけることができるのか?」との問いには、半農半Xという考え方があるなど、コミュニティー経済の例を紹介。また環境ジャーナリストの立場から、次の経済発展のための「自然エネルギー」の重要さにも触れ、ドイツの太陽光発電の経済発展成功事例を紹介するとともに、日本政府も補助金だけでなく、お金がまわる上手い仕組み作りが重要課題だと話しました。
会場からは「日々がグローバルの競争だが、将来何をもってこの国の経済を支えていくのか?」「日本は、少子化で子どもが少ないのに、移民を受け入れないのはなぜか?」「消費者として、どういった消費行動(=意思行動)が必要か?」などさまざまな質問が上がり、講師の皆さまがひとつずつ丁寧に回答していたのが印象的でした。
この分科会を通じて、日本経済を発展させていくためのたくさんのヒントと考える機会を与えていただきました。また、3人の講師の方々が共通して発言した、「答えは日本の中にある」という言葉に勇気づけられた90分でした。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。
日本経済は発展しないだろう。でも、発展して欲しい。そんな思いでこの分科会に参加しました。ここで再確認したことは「経済」の意味。本来「経世済民」とは世を治め、民の苦しみを救うことであるのに、私はお金やモノに置き換えていました。印象に残ったのは、マズローの5段階欲求説にもう1段階「人の幸せ」があるということ。自己実現の次に他人の幸せを欲求する。他人の幸せを願う社会には愛や感謝が溢れているだろう、その段階まで自分を引き上げたいという思いを持ち帰りました。