働く女性の声を発信するサイト『イー・ウーマン』
(松岡美奈子 / 佐竹葉子 / 山本由佳子 / 久住博子※)※ファシリテーターピアのリポートを読む
「『働く女性』が求める住まいと環境〜ライフスタイル〜」の分科会では、講師に、女性が求めるリフォームについて提案を行う松岡美奈子さん、自立した働く女性向けのマンション開発を手掛けた三井不動産の山本由佳子さん、そして「水回り」を中心に研究開発してきたINAXの佐竹葉子さんを迎えました。ファシリテーターを務めたのは、横浜で女性だけによる住宅設計事務所を経営する久住博子さんです。
松岡さんは、現在の住まいや家電は、家事労働をいかに軽減するかという視点で考えられていて、「掃除のしやすさ」が1つのトレンドであると説明。設備や機能を見直すことによって浮いた時間から、働く女性にとって大切な“くつろぎの時間”が生まれることを紹介しました。また、松岡さんの事務所にも在籍するという「空気ソムリエ」とは、家の健康について空気環境の面から考える専門家のこと。今後、家の健康と私たちの健康について、“部屋の空気”にも大きく注目する必要がありそうです。
水回りの専門家であるINAXの佐竹さんは、キッチン、バス、トイレ、洗面所の4つの設備の中で、女性がこだわるポイントを3つ紹介。佐竹さんも松岡さんと同じく、働く女性にとって「時間は有限!」と強調、できるだけ掃除や家事の時間を省いて、いかに「くつろぎ」の時間を多く提供するかが重要であると述べました。仕事にプライベートに、日々忙しくしている会場の皆さんは、心から共感している様子でした。
三井不動産の山本さんは、働く女性向けのマンションブランド「パークリュクス」が提案している「美しいひとのマンション買い10の法則」を紹介。「帰っていく場所が洗練されていることは、心を高揚させること」、「家だけでなく、住む街の雰囲気も重要」など、働く女性たちが美しく住まうことで自分自身を高めていく、という家選びの視点に、会場は聞き入っていました。また実際にマンションを購入する働く女性たちは、自分の人生におけるステップアップの1つとして家を購入する例があることも紹介。
ファシリテーターの久住さんからは、働く女性、特に“ワーキングマザー”にとっての「時短」の住まいについて詳しく述べました。設備や、導線を工夫することで、家事の時間を短くし、自分の時間をつくり、家族とのコミュニケーションの時間もつくることができることを、実際に、ワーキングマザーの住まいのコンペで提案したプランを参考に、どうやって導線を短くするか、収納を確保するか、わかりやすく説明しました。
「住まい」と一口に言ってもライフスタイルや、住まい方によってさまざま。設備、リノベーションからセキュリティ、資金計画までいろいろな視点に触れつつディスカッションは進み、「お客さんが来たときに、どうやってものを隠す?」といった話題には笑いも沸き起こりました。会場からは、「家で仕事をするときのスペースの工夫」、「リフォームのスケルトン工法」、「オール電化」などについて具体的な質問も上がり、活発な意見交換が行われました。
今回の参加者の約半数が単身世帯の働く女性たち。そんな女性たちに松岡さんから「単身の方には家の購入を勧めます。自分のご褒美ハウスを手に入れてほしい」と提案がありました。今後のライフスタイルがどのように変化するかわからなくても、女性が家を資産として持っておくことは、安心につながる、との意見です。
忙しく働く女性だからこそ大切にしたい「住まい」という大きなテーマでしたが、これから初めての自宅購入を考えている人から、リフォームや立て替えを考えている人まで、ためになるヒントが盛りだくさんの大変充実した90分になりました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。
この分科会のテーマは建築を生業としている私の根本的テーマです。昨今の住宅購入・リフォームに際しては、決定権者は女性の場合が多いのです。その意識を探りにきたのが本音です。会場で配られた冊子にあった「美しいひとのマンション買い10の法則」は「街の洗練にお金を払う」、「家で食べる方が贅沢だと思える」等なかなか示唆に富んでいます。さらに、家は自分が作りこんでいくもの。完成品を買っただけでは未完成だと思うのです。その考え方をクライアントに伝えていきたいと思いました。
私自身、住宅設計の仕事をしていますのでどんな話が聞けるか楽しみにしていました。掃除のしやすさを求める人が多い、という具体的な話も参考になりましたが、「自分がどんな暮らしをしたいのか事前に考える必要がある」という話に共感しました。間取りをどうするかデザインをどうするか、という話になりがちですが、どんな暮らしを望みどんな価値観を持っているのか、そのために必要な間取りやデザインはどんなものか、その点をきちんと聞きだせる設計士でいたいと思います。