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(丹下一)ピアのリポートを読む
俳優、演出家、そしてコミュニケーショントレーナーである丹下一さんの分科会「相手を動かすコミュニケーション」は、全員参加型のワークショップ形式で開催されました。参加者の皆さんが、会場内を動いたり、大声を出してみたり、手をつないだり、肩を組んだりと、終始、躍動感にあふれた、とてもユニークなプログラムが繰り広げられました。
コミュニケーションについての“論”やマニュアルは、インターネットや書籍を調べて読めばよい、でも、そこに書かれている文章は、所詮、台本にしか過ぎない。「台本は俳優の“からだ”を通して、初めて生きたものになる」との丹下さんの言葉通り参加者自身が“からだ”を使うことで、自分を動かし、相手を動かす、実践型のコミュニケーションを体感する分科会となりました。
まず、相手の言葉を語り直す「リテル(=retell)」というワークショップが行われました。このワークショップでは、三人一組になります。あるお題のもとに、1分間、話をするテラー(=teller)という役割の人、そして、テラーが話し終わった後に、テラーの話をリテルする人、そしてこのふたりに立ち会って感想を言う人。最初のお題は「最近のわたし」。人に伝える、人の話を聞く、人の会話に立ち合うというコミュニケーションの基本に立ち返ります。
つぎは、二人一組からはじまり、最後に四人一組のチームに展開するワークショップ。チームメンバーが、お互いの手のひらを合わせて、会場内をゆっくりと動きます。1名のリーダーが、一切の言葉を使わずに、チームを動かしていきます。手のひらから伝わる相手の体温を感じながら、ゆっくりと、慎重に動いていくのです。ほかのチームにぶつからないように、チーム全員の「安全」を守ることがポイント。目線を合わせ、呼吸を取り合います。お互いのからだのエネルギーを感じながら、チームの中に、少しずつ一体感が生まれてきます。
演劇の世界でも、俳優陣のエネルギー、心身の状態を感じるために、まずチーム全員で、円陣を組むそうです。どこから稽古をスタートすればよいか、どうすれば、楽しく充実した稽古になるかを演出家として考えるためには、大切なこと。そんな演出家・丹下さんならではの手法が、分科会にふんだんに組み込まれていました。
分科会の後半では、「声」を使ったワークショップが行われました。四人一組のチームになって、コンダクターがチームの声の強弱や高低を指揮するプログラム。そして最後には、参加者全員が肩を組んで、丹下さんとともに大きな声で合唱しました。
汗をかいて運動不足も解消! いつも遊び心を忘れない丹下さんの分科会では、参加者は、必ず最後にハッピーになれる! 参加者の皆さんの笑顔とエネルギーに満ちあふれた90分間でした。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。
この分科会で印象に残っているのは、人の「気」(エネルギー)を感じた事です。体が触れていなくても、会場中にエネルギーが充満していました。身近な人からは、特に強く感じました。コミュニケーションって、言葉ではないのだな、と思うと同時に、何か温かいものを感じました。それが何なのか、うまく表現できませんが、何かを見つけた気がしました。今まで、伝わり方を気にするあまり、少し引いていた自分がいましたが、これからは積極的に、人と楽しいかかわり方をしていきたいと思います。
とにかく楽しかったのを、体も脳もとても覚えています。人の話をよく聞いて、誰かに伝えるように話したりするのは、営業の仕事においても、後輩の指導においても、大切なことだと実感しました。複数人で動いたり、コーラスしたりするのは、リーダーになった人に迷いがあると、グループ全員が迷ってしまう…なんて、体動かしているだけなのに、とても大事なことを気づかせていただけました!この体験を今の仕事に置き換え、悩んでいる人や、自分のスキルアップをしたい人に伝えていきたいです。
椅子をすべて片付けて、ほぼ動きっぱなしの分科会でした。「人の流れを感じながら他の人にぶつからないように歩く」というワークでは、この世界で一人ではない、多くの人とともに生きているという感覚がありました。一番印象に残ったワークの「リテル」は、相手の話を本当によく聞いていないとできません。いつも人の話を聞き流していたことを反省しました。講師の丹下先生。体を張った体当たりの講義、本当にありがとうございました。