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従業員出身ではない人が取締役や監査役を務める「社外役員」。特に、社外取締役は先進国・中進国では導入が義務化されており、上場企業ではほぼ100%が採用しています。しかし日本での導入は任意で、実際の採用は半数程度。分科会「日本企業を強くする〜社外役員の新しい視点」では、この現状について、社外役員を務めるお二人と、社外役員を採用している経営者お二人とともに掘り下げていきます。
「今日は社長さんもいますが、社長と呼ばずに『さん』付けでお話していきましょう」と、リラックスした雰囲気をつくってくださったのは、ファシリテーターの富永誠一さん。全国社外取締役ネットワークで事務局長を務めていらっしゃいます。
社外役員を採用している経営者の1人は、ニッセンホールディングスで代表取締役社長を務める片山利雄さん。2008年にコーポレート・ガバナンス改革を行うまでは、取締役8名のうち、社外は2名。改革後は4名に。改革の背景にあった業績や経営環境の変化を述べ、「一番本気でやらなければと思った理由」に、創業者から託された思いを熱く語りました。
「ガバナンスとはまさに経営にとっての土壌です。良い土壌がなければ良い作物が育たないのと同じで、いくら素晴らしいビジネスモデルがあっても、ガバナンスがしっかりしていなければ、高いパフォーマンスを出し続けることはできません」という言葉に、皆さん深くうなずきます。
もう1人の経営者は、シチズンホールディングスの代表取締役社長、金森充行さんです。
「価値観がものすごいスピードで変化している現在、今まで通用していたことが通用しなくなっていることに気づかないのがもっとも危険。会社の存続にも関わります。だからこそ、企業に深く関わっていない、またはまったく知らない人の視点が重要です」
そして、現在2つの企業の社外監査役を務めているのは、生活経済ジャーナリストの高橋伸子さん。
「私は現場主義。人に会って話を聞くことを大切にしています。社外役員では異色かもしれません。企業に不祥事が起こってから指摘するのではなく、起こさせないために状況を把握して対応するのも監査役の仕事だと考えています。社外取締役と監査役、両方の経験がありますが、監査のほうがおもしろい。誰とでも会って話を聞くことができますから」
編集記者を経て、金融・経済分野で活躍するジャーナリストとしての鋭い視点が冴える高橋さんならではの言葉です。
3社の上場企業で社外役員を務めるスコット T.デイヴィスさんは、海外の現状も取り上げながら「社外役員の効果については、まだ空論が多い」と警鐘を鳴らします。
「社外役員は関係者であり、当事者ではない。ガバナンスが活きるかどうかは、その企業が価値を創造できるかどうかに尽きます。価値創造を本気で考えている企業でなければ、私は社外役員を務められないと考えます」
毎年多くの企業から社外役員のオファーがくるというデイヴィスさんだからこその厳しい見解に、講師陣や参加者の皆さんの表情も引き締まり、議論は白熱していきます。
その後、経営者のお二人からは社外役員によって会社にもたらされた予想外の効果などが語られ、会場からの質問にも答えながら、ディスカッションが深められていきました。
片山さんが述べた「高度成長時代はむしろ変わることはリスクであったが、今のような変化の激しい時代は変わらないことがリスク」、金森さんの「一番のボーダーは、実は自分自身の中にある思い込み。それを切り崩したい」という言葉は、経営者でなくとも心に留めておきたいメッセージとして、参加者の皆さんに響いたのではないでしょうか。
やや厳しい表情で企業側に求める課題を述べていたデイヴィスさんは、最後に笑顔で「続きは、この後のパーティで」と締めくくり、真剣な討論から一変、和やかな雰囲気に。皆さんの盛大な拍手とともに終了となりました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。