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今年3月11日に起きた東日本大震災。未曾有の津波、地震、そして福島第一原子力発電所事故によって、東北地方は甚大な被害に遭い、日本全体が経済的、社会的に大きなダメージを負いました。
本分科会では「日本の復興。私たちの提案」をテーマに、東北を代表する大都市である仙台市市長の奥山恵美子さん、横浜市長の林文子さん、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で特任教授を務める高橋秀明さん、デジタル・エヴァンジェリストとしてIT活用についての講演などを行う金谷武明さんの4名をパネリストに迎え、復興のための取り組み、今後の復興のありかたについて語っていただきました。ファシリテーターは、仙台大学教授であり、東日本大震災復興構想会議委員を務める高成田享さんです。
最初にマイクを渡された高橋さんは、震災に大変なショックを受け、直ちにフェイスブックページ『3・11後の日本を構想する』を立ち上げました。さらに、防災に強い都市構想を推進する東日本環境防災未来都市研究会の設立に参画し、再生可能エネルギーとしてのギガソーラーを含めた未来都市デザインをすでに複数の市町村へ提案しています。「地域の声を最優先すべきなのは言うまでもないが、その声をもとに大きな復興構想を描くのは被災していない、遠隔地で暮らす余裕のある者たちの役目である」と、静かに熱く語りました。
続いて、「横浜市も被災地である」と林さん。帰宅困難者の誘導の例や、関東の主要なハブポートである横浜港への寄港数や観光客が激減したことに言及しました。また、風評被害を受けた企業に緊急融資を行うなどの支援も行っている、といった取り組みもご紹介。津波避難対策など防災計画の見直しを進めており、「横浜市を強い都市にする」と抱負を語る目には強い意思が感じられます。
「今日は勤務先のGoogleとは関係なく、個人として参加している」という金谷さんは、被災地の行政の方を対象にネット活用の講演などをされています。Twitterを農業に活用する提案などを盛り込みながら、クラウドやソーシャルサービスなどの活用法を普及させることで復興のお手伝いができればと語りました。
仙台市長の奥山さんは、被災地の二大トピックとしてあげられる仮設住宅とがれき処理について言及されました。これらのように早急な対応が求められる課題がある一方、コミュニティの在り方など、時間をかけて解決していかなくてはならない問題もあり、「進捗率ばかりに気を取られないでほしい」とマスコミへの思いも吐露。会場の参加者の多くが共感するように頷いていました。
その後、復旧、復興が遅々として進まない問題や、平時より地域コミュニティを強化していく大切さ、自治体の権限や雇用問題、エネルギー問題、災害時におけるITの重要性、仮設住宅など、話題は様々な方面に。いくら時間をかけても議論しつくせない問題が山積みであることを改めて認識した人も多いのではないでしょうか。
会場からは、被災地より支援参加された方の「東北地方独特の温和な性質を考慮した無理のない復興計画を立てていただきたい」との意見や、経営者の立場から緊急雇用対策の期限後も継続して雇用できるような仕組みづくりを望む声、考えるだけでなくとにかく行動に移してほしいという声などが次々にあがり、議論は白熱。私たち全員が被災地を思い、地道でもそれぞれ行動を起こしていくことが重要だと再認識する分科会となりました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。
分科会を通じて考えたことは、この震災で発生した課題というのは、3.11以前にも指摘されていたことであり、今回の震災を機に皆で考え、行動しなければならないということだ。家族・高齢化・独居老人・ITの地域間格差・地方分権など、課題は多種多様だが、政治や行政だけに任せるのではなく、私たち市民の目でしっかりと見て・考えて・自ら行動することが大切で、今はそのことができる機会なのだと思う。特に、市民・女性の目線を入れることのできる大きなチャンスとも言える。それが復興後の新しい日本の姿を作り上げ、現在あるボーダーも乗り越えていけば、素晴らしい明日が待っていると思う。少しずつでも動いていければと願っています。
(入口和朗さん)