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時刻は11:30。午前中ながら既に5人のスピーチが終了し、6番目に登壇されたのは、おなじみ宇宙飛行士の野口聡一さん。やさしそうな笑顔に穏やかな口調が素敵です。
野口さんは、最初にスペースシャトル「ディスカバリー号」で宇宙に行った2005年から、2009~2010年のソユーズ宇宙船搭乗まで、日本人として最長の177日3時間5分、宇宙に滞在した経験をお持ちです。
最初に、ソユーズ宇宙船内外での活動を記録したビデオが上映され、続いて「宇宙飛行士未満、訓練前の写真です」と、幼少時の可愛らしい写真がプロジェクターに映し出されると、会場に和やかな笑い声が広がります。 やんちゃな子どもを立派な宇宙飛行士に変えるためには、「経験を伝えるだけでなく、能力を能動的に伸ばしていくことが大切」と野口さん。
そして、宇宙飛行士の資質として、「状況認識」「知識」「スキル」「迅速な対応」「異文化コミュニケーション」「アウトリーチ」の6つをあげ、こうした資質に従って個々の能力を伸ばし育成していくのだと強調されました。
例えば、異文化コミュニケーションとは、単にロシア語を学ぶというのではなく、考え方やバックグラウンドの異なる人々といかにチームを組んで仕事をするか。それを地上でいろいろな国の人と接するグローバルな環境で訓練することで身につけていく、とのお話には、多くの参加者が深く頷いている様子でした。
今年は、毛利衛さんが宇宙に行ってから20年。これまでの20年を振り返ると、最初は「科学実験」のため、その後「物を組み立てる」ため、そして「長期滞在」のためと、宇宙へ行く目的は時代とともに変わってきた。 ガガーリンの頃は完全に「理系」の時代だったけれど、これから目指すのは「理系と文系の融合」。普通の人が宇宙に行く時代になればなるほど、そこへ行く意味や成果をしっかり考え、伝えなければならない。それには文系との協働が必要と、野口さんは語ります。
講演の最後は、「これからは、国家レベルというよりも個々人が、宇宙とは何か、そこへ行って人間は何をするのかと、個のレベルに落とし込んでいく時代です。みなさん一人ひとり、ぜひ考えていってください」と、参加者へのメッセージで締め括られました。 ゆったりと静かに力強く、普通の言葉で語られるスケールの大きなお話に、多くの参加者が魅了された30分間でした。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。