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世界における真のリーダーたち。彼らはどのような発想で考え、行動しているのでしょうか。この円卓会議では、MIT(マサチューセッツ工科大学)で活躍されている石井裕教授と、ボディショップ、スターバックスとグローバル企業の社長を歴任された岩田松雄さんを迎え、その発想の源を探っていきます。ファシリテーターは佐々木かをりです。
岩田さんがリーダーのあるべき姿として大切にしていることは、「偏見をもたないこと、“徳”を大切にすること、常に人から学ぶ謙虚な姿勢」とのこと。「本来の学問の意味とは、人としてどうやって生きていくかを追求すること。だからこそ学び続ける姿勢が大事です」とも。
石井さんは「トップダウンだった中央集権の時代から変化し、個人同士がネットワークでつながり、ボーダーがなくなっている現代。それはつまり、変化が破壊的であるということ。変化を選び取り、新しい規範を打ち出せる。“破壊的な創造”を仕掛ける人がグローバルリーダーとなり得る」と語ります。
ディスカッションでは、多くの方が一斉に挙手されました。「どんどん手が挙がる!すごいですね」と石井さんも思わず感嘆の声を上げます。「日本はリーダーが不在といわれるが、何が原因なのか」「後進を育てる場合、どのようにポテンシャルを見出し、引き出せばよいのか」「文化の異なる外国人スタッフに対してリーダーシップをとるには」…… 次々とテーマが掲げられ、活発に意見が交わされていきました。
まだまだ質問が挙がる中、残念ながら終了時刻に。最後に石井さんから「“出る杭”としての力をつけるには、徹底的に議論すること。悔しさや屈辱などマイナスのエネルギーがあったらそれを貯金して、プラスのエネルギーに変えよう」。岩田さんから「自分自身のミッションとは何かを考え続けてほしい。好きなこと、人のためになること、得意であること、この3要素が重なるところにミッションがある」と、メッセージが贈られました。
佐々木は「リーダーであるためには、自分自身が高い志を持つこと、自分が燃え続けることが大切。今日は具体的な答え、方程式がもらえると思う人がいたかもしれませんが、どこにも答えはない、考え続けるところに答えがあって、発想や行動の変化が生まれる」とコメントし、会議は惜しまれつつも幕を閉じました。
「かつての自分は謙虚ではなかった。挫折によって変わった」という岩田さんの、胸に熱く迫る言葉。力強いキーワードとともに繰り出される、石井さんの哲学的な言葉。どちらも会場の空気を圧倒し、多くの方が真剣に聞き入った90分間。みなさんの心には、それぞれどのようなリーダー像が刻まれたのでしょうか。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。
美百合 さん
石井裕さん、岩田松雄さんの好対照な話し方・話の展開の仕方をされるお二人のお話は興味深く、そのファシリテーターをされた佐々木さんのコーディネート力もかなり勉強になりました。特に質問タイムでは、学生さんの発言が圧倒的に多く、それを聞いていてホッとしたのは、聞いていてこの先の明るさを感じ取れたからかもしれません。その時の石井さんの答えに愛情がこもっていて、印象に残りました。「自分で考えなさい(今日だけでもこれだけいろいろな言葉を聞いているのだから)」
この言葉を発するだけなら簡単にできます。
でもこの言葉の使い方を、今一度意識してみたいと思います。
ぴろこさん
「謙虚さ」と「出杭力」。対局にあるような二つの言葉だが、これはリーダーに求められること。自分の価値観にとらわれず、柔軟に多様性を受け入れ、他者から学ぶ姿勢。実はこれは、リーダーだけでなく、社会から必要とされる人材すべてに求められているものであろう。昨年の会議では「ボーダーを越える。」がキーワードだったが、今回印象的だったのは「もうボーダーを意識することは意味がない」との言葉。「ここではすべてがどんどん進化している!」と思った。
大学生の質問が多く、たくさんの学生が高い志を持って参加していることに驚いた。当日会場にいたすべての若者たちにエールを送りたい。自分ももちろん進化していきたい。来年の会議も楽しみだ。
tracyさん
石井節炸裂です。かなり刺激的な言葉が飛び出します。「ボーダーのないバトルフィールドで指揮官となり勝利を得ることができる者がリーダーだ」。このような考え方に初めて出会いました。世界的なリーダーはこうなのでしょう。
岩田さんの言葉は、私には具体的に思えて、わかりやすかったです。
「元気のない男性をどうしたらいいか」という質問に対して「元気のない男性も女性もほっときましょう。伸び代のある男性、女性の背中を押してあげましょう」
納得の意見です。リーダーは、その人たちを気にしつつも、頑張ろうとする人を応援してほしいと思います。
この円卓会議もあっという間に終わってしまい名残惜しかったです。ありがとうございました。
ことみつきさん
「人生の目的、使命」について、唯一の正解をずっと求めていた。誰かが教えてくれるのではないか、と期待して……。私は質問する勇気がなかったけれど、唯一の正解なんてないことに気づいた。正解は何通りもあり、更にその組み合わせでもっといい回答ができるかもしれない。一番大切なのは自分がどこへ行きたいのか、考え続けること。徹底的に議論して自分の考えを太くする。「出る杭」になって打たれてもへっこまないように突出する。感受性を磨き、新しい文化を体験し、理解し、これまでのものを壊し、新しいものを創っていく。
私が学んだことは、自分を信じて突っ走ること! もちろん、その人の大義、志、価値観がとても大切な要素になっているのはいうまでもない。
Hazel Nutsさん
大切なことは、人間としての徳の高さや、学び続けようとする謙虚さ、ぶれない軸。自分がいる場所で貢献できる人こそが、グローバルリーダーになれるのだと思いました。
岩田さんは、グローバル企業を歴任された輝かしい経歴をお持ちですが、強いリーダーというよりも、温かく、人間味のあるリーダーなのだと思いました。石井先生は、研究分野は理系でも、考えや発言が哲学的・文学的で、文系の人なのではないか、という印象さえ得ました。
グローバルであっても、ローカルであっても、人は一人では生きていけないし、働くことはできません。組織を構成する人がより多様になるグローバルな場面では、より人間味のある、より人を大切にするリーダーが必要なのだと思いました。