働く女性の声を発信するサイト『イー・ウーマン』
会議番号:3420 開催期間 2016年12月09日- 12月16日
いまそこにある危機とは? 私が想像していた以上に「あまり心配していない」方が多いようですね。kkoさんの「何が心配なのか」という問いに、私なりにお答えしたいと思います。僕自身は働き手が減ることについては何とかなると思っています。生産性を上げるという方法もあるでしょうし、自動化(ロボット化)を推進するというやり方もあるでしょう。ただそれでも需要は減ります。単純すぎる例えかもしれませんが、一つご紹介します。 たとえば自動車。私は団塊の世代で、1学年が270万人弱いました(いま生まれている赤ちゃんは100万人ほどです)。私たちの時代には小学校も中学校も1教室に55人ぐらいいたと思います。まさにすし詰めでした。そうした私たちが社会の需要を引っ張っていた時代は日本の高度成長と重なり、そして自動車ブームとも重なっていました。 日本国内の自動車総販売台数は1990年にピークをつけました。年間、軽からトラックまで全部合わせると約780万台売れました。今はどうでしょう。年間450万台前後です。これは景気が悪いからではありません。日本国内の需要構造が変わったから、以前ほど売れなくなっているのです。自動車会社はこの国内で減る需要にどう対処したのでしょう。もちろん工場を閉鎖して生産を減らしたのです。その結果、従業員も減りました(だからトランプ米次期大統領は雇用を取り戻すと言っています)。雇用が減れば、当然、消費も減ります。日銀の黒田総裁が当面の目標とした物価上昇率2%がなかなか達成できない理由のひとつがここにあります。 他の国は対処できているのかという問題があります。「フランスやスウェーデンは一時下がったけどまた上がってきた。それは政府が人口増加政策をやったからだ」という人がいます。私もこの点については、人口問題の専門家に聞きました。その答は「フランスは人口増加政策をもう1世以上前からやっている。そして社会が子どもを育てるという意識が浸透している。それに出生率が下がったように見えたのは、晩婚化と晩産化が進んだせいであって、ある年齢の女性が一生の間に生む子どもの数は減ってはいない」と説明されました(これは少し分かりにくいので記事にするつもりです)。そしてその専門家は、「出生率を上げることも難しいが、人口を増やすことはもっと難しい。日本の場合は不可能と言ってもいい」と言いました。 いま私たちが直面しているのは、社会保障や公共サービスを維持しながら、人口減少社会にどう対応していくかという問題です。人口が減り、税収が減れば、警察官や消防士を確保することも難しくなります。もちろん働く人の平均年齢も上がってきます。交番を減らし、消防署を減らさざるをえなくなるかもしれません。そうすれば犯罪や救急、火事などへの対応が遅れることになるでしょう。もう一つ大きな問題は医療です。いま年間の医療費は41兆5000億円(2015年)です。そのうち約40%ぐらいは税金で賄われています。後は、保険組合や患者自身の負担です。しかし現役世代が減って高齢者が増えれば、高齢者が加入している保険組合はやがて支払が不能になるでしょう。年金や介護も同じことです。 こういった問題をどう解決していくのかは世代間などで利害が対立するだけにとても大きな問題であると考えます。もう一つ。こうした現状に直面しているのは日本だけではありません。お隣韓国やドイツなども同じ状況が日本より少し遅れてやって来ます。つまり日本は人口問題では「先進国」なのです。 さて皆さんにお尋ねします。誰かが我慢しなければならない(制度改革によって不利益を被ることを甘受しなければならない)ような状況になったら、その負担を誰にお願いしますか。少し乱暴な問いかけですが、思考実験として考えて見てください。社会的弱者? 資産家? 教育?治安? 医療? 老人? 若者? いろいろな考え方があると思います。私は、誰かを犠牲にするのがいいと思っているわけではありません。でも社会的に負担できない時代がそう遠くない将来にやってくると思っているのです。皆さんのお考えを聞かせてください。★参考:藤田議長が執筆された記事です。「人口減はフリーフォール、2060年には3分の2に/森田朗国立社会保障・人口問題研究所長に聞く」★藤田議長の過去の円卓会議より・政務活動費、知っていますか?・中国の南シナ海進出、脅威ですか?・アメリカ大統領選、興味ありますか?
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