佐々木かをりのwin-win 素敵な人に会いました、聞きました

154

富永誠一さん

特定非営利活動法人 全国社外取締役ネットワーク 事務局長

講演依頼について問い合わせをする

第三者の目がいかに入っているか

佐々木

先日、イー・ウーマンサイトでの「働く人の円卓会議」で、社外取締役について会議をしていただいた時、「政治にも同じような機能が欲しい」と書いている投稿がありましたね。株式会社、上場企業の会社法に則って、ということではなく、そもそもNPOであっても、学校であっても、病院であっても、政治家の団体であっても、社外というか、組織外の目が必要だと思います。

富永

どんな組織でも、それなりの規模になって、社会的責任が増せば、第三者の目は必要でしょう。見られることで規律が生まれる。規律が効いている組織の方が、規律が効いていない組織よりも、長期的に見れば高いパフォーマンスを上げることは容易に想像できます。第三者の目がいかに入っているか、そういった仕組みをどうつくっていくか。それを対外的に発信する。それも単に情報公開するというだけではなくて、そういうことを通じて、「我が社は透明性を確保してやっています」ということをアピールする組織が増えていって欲しいと思います。

佐々木

そうですよね。透明性という言葉はよく使われますけれど、私は社外取締役というものこそが、ダイバーシティの基本だと思います。

富永

まず第一歩ですね。

佐々木

それから経済成長という意味での、今よく言われているコンプライアンス。私、上位概念のエシックス(企業倫理)という概念の方が好きですけれども、これらにも直結するわけですよね。

富永

適切な環境が整った上での話ですが、第三者が入って最も効果が上がるのがコンプライアンスや企業倫理の問題だと思います。それは各企業独特なものではなくて企業共通の問題ですので、第三者でも意見を言いやすいですからね。

佐々木

となると、先日の「第16回国際女性ビジネス会議」の分科会でデイヴィスさんが「データがない」とおっしゃっていましたけど、社外取締役がいる企業の方が株価の上昇がりが大きいとか、収益が大きくなったとか、そういった数字を集めていくことが本当は1つの大切な説得材料なのでしょうね。

富永

最近の研究では、社外取締役と企業業績の間に正の相関がある、つまり社外取締役のいる会社の方が高いパフォーマンスを上げるという研究成果があるのですが、残念ながら誰もが納得する研究はまだありません。企業の業績というものは、取締役会の形やガバナンスだけでなく、さまざまな要因が絡みあって出てくるものなので、なかなか難しいと思います。僕も学者さんや大学院生からインタビューを受けることがあるのですが、日本の場合はガバナンスの先進企業が少ないので、サンプルとして統計的な優位性を得られるだけの数がそろわないだろうということが一点、もう一点は、ガバナンスは長期目線ではかられるべきなので、調査対象の年数が少し足りないような気がします。

僕たちの立場としては、統計的なデータを作れなくても、よい事例づくりに貢献することはできる。独立した立場の社外取締役が入ることをきっかけにして、経営者が頑張って組織を強くして、その結果、パフォーマンス、株価や業績がよくなっていくという事例をつくることに貢献したい。いくつかそうした企業が出てきていますので、その数を増やしていけたらと思っています。


  • 17 / 23


バックナンバー

過去の一覧

ページの先頭へ