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会議番号:3124 開催期間 2011年10月24日- 10月31日
「国を開く」とは、なんでしょうか?日本は幕末、黒船来襲で開国した。第二次大戦で敗れ米国によって日本の統治システムが変わった。両方とも、「日本の構造改革」を促し、日本が世界に羽ばたくきっかけとなった。 だから今回も「国を開けば、日本は強くなる」、そう考える人がたくさんいるのかもしれません。私が危惧するのは、自分たちをどう変えるのか、そこが曖昧なまま、よその国のイニシアティブに国のあり方まで委ねてしまうことです。 「国際社会」という言葉はきれいです。しかし、通商交渉は「国益」のぶつかり合いです。「国益」。これも綺麗ですが、自己の利益を実現したい人たちが国家を動かして 狙いをつけた市場を手に入れることでもあります。「奪い合う世界」は、あまり上等とはいえませんが、TPPの裏にはそうした思惑が渦巻いていることに注意すべきです。 弱肉強食のジャングルに入ろうとしているのに、野田政権がそのリスクを国民に説明しないのはフェアでない。今の状況は、危ない目に会いそうな人たちが「反対」の声を挙げているだけ。それに対して「大丈夫」とも「多少の覚悟はしてください」とも言わず、「まだ決まっていないから」というだけでは、無責任です。 日本では、農業問題が中心に語られ「安い農産物が入ってきたら日本の農業は立ちゆかなくなる」という悲鳴と「ブランド農産物を輸出すればいい」「これを機会に大規模化が進む」という意見が交錯しています。わたしも農業改革は必要と考えますが、「その手段がTPPか」というと、首を傾げたくなります。 局部の癌を抑えるため、体全体に放射線を当てるようなやり方だからです。TPP交渉は24分野あり、農業はその一つにすぎません。保健医療や政府調達の開放か、食品の安全基準まで、いわば「構造協議」のような交渉です。 議論を主導するのは米国なので、以前問題になった「対日経済要求」が、この場で蒸し返される心配もあります。協議の中には受け入れた方が日本の未来にとってプラスになるものも在るでしょう。 しかし外圧で日本を変える、という思考から抜け出すときではないでしょうか。政権の中で、「TPPのプラス・マイナス」が、吟味された形跡はありません。 毎日新聞がスクープした「政府内部文書」では、「APECの直前に日本が参加表明することが、対米関係を好転させる」とありました。来年再選を迎えるオバマ大統領にとって、リーマンショックから立ち直れない米国経済に新たな目玉政策が必要で、その大きな柱がTPPです。普天間基地の移設では米国との約束が守れない日本、オバマさんと会うときの「手みやげ」がTPPなのか。 製造業がダメな米国は、医療機器や薬品、遺伝子技術、軍事技術、金融などで新たな商売のタネを増やそうとしています。それは米国の勝手ですが、その路線に日本が市場を開くことが、今必要なのか。交渉で日本が得るのは、なんなのか。そこが曖昧なままです。野田さんが「政権の足もの固めること」が、狙いではないのか、などと考えたくなる展開です。 世界は甘くはない。漠然とした「開国論」には、注意した方がいい、と思います。
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