働く女性の声を発信するサイト『イー・ウーマン』
会議番号:3193 開催期間 2012年09月21日- 09月28日
相変わらず軽減税率のほうが、わかりやすいということで支持が多いようです。 では、軽減税率に代わる給付付き税額控除とはどのようなものでしょうか。実際にこれを導入しているカナダの例を説明しましょう。 カナダでは、家計調査などから低所得者の基礎的生活費を計算します。どこまでが低所得者かということは政治的な判断になります。基礎的生活費とは食料品や最低限の衣料費など、生きていく上でこれだけは必要だろうと思われる金額です。そしてそこに付加価値税率を掛けます。つまり、これら低所得者層が生活に最低限必要なものを購入した場合に負担しなければならない消費税額を算出するのです。そしてその額を本人からの申請に基づき、審査をした上で本人の口座に振り込むのです。 本来の制度は彼らが支払った所得税から控除する(差し引く)、控除できるほどの所得税を納税していない場合は、現金を給付する、というものですが、カナダでは行政コストを考えて各家庭に直接給付をしています。 つまりこの制度を作ることで、ある程度の所得以下の人は消費税を負担しなくていいことになるわけです。 実際にわが国に導入した場合どうなるかを見てみましょう。 グラフは日本でのものですが、横軸が年間世帯収入で、縦軸が家計の所得に占める税金の負担割合の試算です(消費税率は10%)。一番上のピンク色の線が、消費税が標準税率のみの場合で、線は右肩下がりになっています。つまり所得が低い人ほど家計に占める税負担の割合が多いのです。これが消費税の逆進性を表しています。その下の黄色い線は食料品に軽減税率を適用した場合のものです。やはり右肩下がりで逆進性があることには変わりありません。 水色の線は、「所得が300万円以下の家庭に10万円を給付し、その後5%の割合で逓減し年収500万円で休止する」という「給付付き税額控除」制度を実施した場合です。10万円という額は300万円程度の世帯の基礎的生活費を100万円と仮定し、そこに消費税率10%を掛けています。これは私が一つの試算として提示したものですが、実際にはいろいろなバリエーションが考えられます。 これを見ると明らかなように、年収500万円までグラフの線は右肩上がりになり、逆進性が解消されています。 このように「給付付き税額控除」は逆進性の解消に極めて有効です。またこの制度をうまく活用すれば、若年層の勤労意欲の向上や生活保護費の効率化、少子高齢化対策やワーキングプア問題にも活用できるのです。なぜなら、勤労所得に応じて給付額を少し増やしていくように設計すればよいのです。実際カナダの制度はそうなっています。 (詳しくは、ジャパンタックスインスティチュートのホームページ参照) 一方で課題もあります。それは所得がいくらかについて世帯単位できちんと把握しなければならず、社会保障・税共通番号(マイナンバー)の制度が必要なことです。現在、日本には800万世帯もの非課税世帯がありますが、これらについての情報を税務当局は持っておらず、自治体の情報に頼る必要があります。 このように、給付付き税額控除といっても、どこまでの家庭を対象にするか、いくらまでの金額を給付するのかといった具体的な制度設計はこれからですし、番号(マイナンバー)の法律を通さなければなりません。しかし、給付付き税額控除制度は、うまく活用すれば、欧米のように、労働インセンティブが与えられ、失業対策やワーキングプア対策になることも事実です。 わが国でも、最近では、働くより手当てをもらうほうが有利というような状況が生まれつつあります。消費税率の引きあがるこの機会に、あわせて日本の社会保障制度の効率化も考えてみてはどうでしょうか。 軽減税率の導入に賛成(YES)の方も、反対(NO)の方も、給付付き税額控除に対するご意見をお寄せください。 ★森信議長の新著『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版)、10/12発売です。【森信議長 過去の円卓会議より】国民皆確定申告、賛成ですか?増税に関する議論。理解できていますか?国民の番号制度導入に、賛成ですか?
イー・ウーマン
表参道カレッジ
eshop
©2014 ewoman, Inc.