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会議番号:3434 開催期間 2017年04月07日- 04月14日
住民に武装グループが襲いかかっている。その両方を目視している時、PKO部隊はどうするか? これは、9条の制約がある自衛隊に限らず、他の国のPKO部隊にとって共通の問題なのです。 今回の自衛隊の南スーダン撤退に賛成とした方でも、現場でもし自衛隊がそういう場面に遭遇したら……そんな可能性のあるところに自衛隊を送ること自体に無理があるとしつつも……撃たざるを得ないだろうという意見をいただきました。 でも、問題は、ことは、その「一瞬」では済まないのです。 どういうことか。相手は単独犯じゃないからです。特に、昨年7月のジュバで起こった「戦闘」で住民を傷つけた主犯は、現大統領派の武装組織もしくは正規軍であるはずの国軍だったのです。 ですから、その「一瞬」、つまり、一回の応戦で何とか武装グループを追い払ったとしても、その後ろにもっと大勢の仲間がいるのです。当然、彼らが二度と悪さをしないように何らかの対策をしなければなりません。その一つがパトロールです。PKO部隊の中でも、戦闘を専門にする歩兵部隊が、フル武装で、装甲車に乗り、町中を巡回する。つまり、武力による威嚇です。 もう一つが、「一瞬」の応戦で挫いた武装勢力を追いかけて行って仲間共々に「無力化」する、つまり殲滅することです。昨年7月のジュバの戦闘を重く見た国連は、これをやる特殊部隊を4000名増員したのです。 もちろん、自衛隊は道路工事などをする施設部隊ですから、こんな任務は任される心配はありません。しかし、自己防衛のためとはいえ他の部隊と同じように武装し、そして同じように迷彩服を着て(自衛隊だけ作業着を着ているわけではありません)、他の部隊と同じ仲間であることを示すPKOの象徴ブルーヘルメットをかぶり右上腕に国連章をつけている。 これはどういうことかというと、こういう「戦闘」で”やっちゃいけないこと”を細かく定めた国際法(国際人道法と言います)があり、その”やっちゃいけないこと”の最たるものが民間人の殺傷であるので、「戦闘」するもの同士は、お互い民間人と区別がつくように見せなきゃならない識別義務があるのです。 そして、自衛隊がたとえ自分の基地の中に引き籠っていても、PKO部隊のどれかが「戦闘」しそれが継続し拡大した場合、相手方の武装組織に、そのPKO部隊と自衛隊を区別する国際法上の義務はないのです。たとえ、自衛隊のヘルメットだけ「9」と書いておいても、「敵」はそれを特別視することなく自衛隊に襲いかかります。そして、その国際法で定める”やっちゃいけないこと”をやらなかったら、敵は自衛隊を合法的に殺傷できますし、自衛隊もそれをできます。 これが、戦場の考え方なのです。つまり、南スーダンのPKOの現場で自衛隊は「軍隊」なのです。9条をたてに日本人がなんと言おうと、自衛隊が日本を一歩外に出たら、誰も9条なんて知りませんし、気にもかけないのです。 さて、どうしましょう。 南スーダンからは撤退しますが、武装した自衛隊をこのままPKOに派遣するには、もういいかげん無理がありそうです。じゃあ、自衛隊を日本の国内法的にも「軍隊」にしますか? それは何を変えればそうなるのでしょうか、9条ですか?それとも、武装した自衛隊を出さなくてもPKOに協力する方法があるのでしょうか? だとしたら、それは具体的に何なのでしょうか? そして、自衛隊のこの問題は、PKOだけのものなのでしょうか? 以下の記事も参考にしてください。・南スーダンの自衛隊を憂慮する皆様へ~誰が彼らを追い詰めたのか? ゼロからわかるPKOの今・国際人道法については:日本はずっと昔に自衛隊PKO派遣の「資格」を失っていた!〜誰も言わない本当の論点・駆けつけ警護、PKO撤退、日報問題…安保法制施行から1年、自衛隊をめぐる課題とは【荻上チキ×伊勢崎賢治】★伊勢崎議長の過去の円卓会議より・集団的自衛権の行使、必要ですか?・日本国憲法第9条の「改正」に賛成ですか?★伊勢崎議長と佐々木かをりの「ウィンウィン対談」も、ぜひお読みください!・紛争解決のために、日本ができること〜平和外交は、まず相手を理解する事から始まります
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