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会議番号:3692 開催期間 2022年08月26日- 09月02日
原子力政策の大きな転換となりそうな岸田首相の発言を受けて、「次世代型原発」への賛否を問うたところ、いまのところの投票結果はYES2割、NO8割といったところ。「次世代型」とは「耳ざわりの良さそうな名称」(「きたさん」さん)ですが、円卓会議のみなさんの印象は、あまり変わりがないようです。 原発というシステムは、使い終わった燃料を放射性廃棄物として出し続けるとともに、廃炉となった原発も放射性廃棄物であるという「宿命」を持っています。次世代型といっても、その宿命から抜け出すことは難しい、と思われたのだと思います。「きたさん」さんは、こうした原発の後処理方法が確立しない限り、「負の遺産」を子どもたちの残せないという意見、Mioさんも、最悪のケースの解決方法が想定できていない状態で次世代型を進めるのは無理という意見です。 欧州委員会はことし2月、原発を地球温暖化対策に役立つエネルギー源と位置付けることを決め、脱原発を進めてきたドイツの主張を退けました。しかし、DiamondBarさんは、温暖化問題の本質は次世代のためによりよい環境を残すことであり、原発は「未来への宿題を増やすだけ」という意見です。 私が新聞社で静岡支局の記者だったころ、浜岡原発を保有する中部電力の人に廃棄物の処理をどうするのか尋ねたところ、「そのうち技術が解決してくれます」と、自信たっぷりに言われました。それから半世紀たちましたが、「次世代型」も廃棄物を減らすことはできても、なくすことはできないようです。「負の遺産」や「未来への宿題」を残したくないという意見は、私には説得力があります。 今回のウクライナ戦争で、原発がミサイル攻撃の対象となる危険が明らかになったという問題提起をしましたが、「ぐーすか」さんは、大型ダムも破壊されたら、下流の市街地に大きな被害が及ぶ可能性がある、と指摘しました。たしかに戦争のリスクは、原発に限りませんね。大型ダムについても、気候変動による想定外の豪雨で崩壊するリスクが高まっている、と最近の米紙が報じていました。激動の時代は、新たなリスクを産み出す時代でもあります。 それにしても、日本の再生可能エネルギーの利用が大きく増えないのは、もどかしいですね。Imagadaijiさんが指摘するように、もっと再生可能エネルギーの拡大に力を注いで欲しいと思います。シンゴパパさんも、日本は人口減少を迎えているのだから、原発の新増設という拡大志向ではなく、電力使用が昼間に集中するピークカットの方法、地産地消による送電ロスの削減、いろいろな電力を貯め込む蓄電池の開発などに力を傾ける必要があるという意見です。 「ぐーすか」さんは、原発の利用技術は発展途上で、研究や投資が必要な分野だと指摘しています。次世代型原発のビジョンを見ると、核燃料を燃やし尽くす技術開発が描かれています。科学技術としては、廃炉技術だけでなく、未開発な技術分野が残されているのだと思います。 一方、重厚長大の重化学工業を軸に高度成長を成し遂げたというDNAが残る日本の経済界や経済産業省には、再生可能エネルギーというのは軽量級の技術で、これでは日本の産業は持たない、という意識があるのでしょう。岸田首相が掲げた「成長と分配」の新しい資本主義も、その具体策である「実行計画」には、「革新原子炉(革新軽水炉、小型炉、高温ガス炉、高速炉等)」が潜り込んでいます。「分配」よりも「成長」なのでしょう。「経済界の利潤のみ追求する時代はとうに終わった」というImagadaijiさんの言葉を私も叫びたい気持ちです。 ところで、原発の新増設は「想定していない」と発言していた岸田首相の方針転換は、唐突という印象を受けました。首相は、次世代型原発の検討とともに、これまでに再稼働した10基に加えて、7基の原発を来年夏以降に再稼働させる方針を示しました。次世代型は検討課題かもしれませんが、再稼働の拡大はスケジュールを示すなど具体的です。次世代型は世間の関心を新設に向ける目くらましで、新設よりはまし、ということで、再稼働への容認を拡大するのが本当の狙いかもしれない、とも考えてしまいます。 というのも、ロシアは欧州向けの天然ガス供給を削減することで、ウクライナへの欧州の肩入れをけん制しています。これに対して米国は、自国の天然ガスをLNGにして欧州に供給するなど対抗策を考えています。日本が再稼働をふやすことは、日本のLNG輸入を減らし、それだけ欧州向けの余力を産むことにつながります。首相の再稼働発言の裏には、エネルギー価格の高騰だけでなく、そんな地政学的配慮が働いているのかもしれません。 最近の世論調査では、エネルギー価格の高騰を受けて、再稼働を容認する意見が反対を上回る数字が出るようになりました。理念よりも生活、背に腹は代えられない、ということでしょうか。再稼働を急ぎ、稼働年数をさらに伸ばす、という政府の方針については、みなさんはどうお考えですか? 次世代型原発の新設とあわせて、ご意見を聞かせてください。
<高成田議長の過去の円卓会議より>
◆「核」の不安、高まりましたか?
◆ウクライナ情勢。日本への影響を心配しますか?
◆原発差し止め、支持しますか?(2016年3月)
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