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会議番号:3732 開催期間 2024年01月12日- 10月25日
朝市で有名な奥能登の輪島。久しぶりにそろって帰省してきた娘さん2人と過ごす、お正月の一家団欒。 しかしそんな幸せの時間を大きな揺れが襲い、自宅の一階が倒壊しました。 お父さんは、がれきの中から自力で脱出し、お母さんは近所の人に助けられました。 しかし帰省していた娘さん2人とおばあさんは、残念ながら亡くなりました。 お父さんは気丈に振る舞い、カメラの前で胸の内を語ってくれました。 横にいるお母さんは、ずっと涙が止まりませんでした。 あまりにも辛いインタビューでした。 わたしは胸が張り裂けそうでした。 子どもたちが、自分よりに先に亡くなることは、これ以上無いくらい辛いことです。しかも目の前で、そして自分たちに会うために帰省してくれて巻き込まれたのです。わたしも二人の20歳代の子どもがいます。普段はそれぞれ一人暮らしをしていますが、このお正月は二人とも帰ってきて一緒に過ごしました。 このお父さんの気持ちが、痛いほどよく分かります。 悲劇を繰り返さないためにはどうすればよいのか。様々な考えが巡ります。 大きな被害を出した奥能登は、古い木造家屋が多く耐震化率が低い地域でした。しかし建物の壊れ方を見ていると、今回の揺れは、それぞれにかなり大規模な耐震工事が必要だったのではないかと考えさせられます。それほど大きな揺れだったといえます。 同じく直下型(断層)地震であった阪神淡路大震災では、経済的な負担が大きい家屋全体の耐震工事の代わりに、寝室やリビングなど、よくいる部屋にシェルター機能を持たせるよう作り変えることも提案されました。そこに逃げ込み生存空間を確保するだけでも、大幅に犠牲者が減らせるのではと、真剣に議論されました。 しかしそういった議論は、年月ともに風化していきました。 東日本大震災では、大きな被害を出した津波に対する対策が、主なテーマになった印象があります。そして今回の地震では、再び建物の耐震がテーマとして取り上げられることになると思われます。 どうすれば少しでも被害を、そして犠牲を減らすことができるのか。 様々な議論が始まり、そして具体的な対策につながることを強く願います。 最終日に向けた前回の投げかけ、「災害を我がことと思ってもらえる、自分を被災した人に置き換えて様々なことを考えてもらえる伝え方」について、皆さんから、様々なご意見が寄せられました。 「自分事として捉えてもらうには、シミュレーションが一番」(シンゴパパさん) 「津波がきたらどうなるのか、建物倒壊の可能性、生活インフラが止まった際の対応などをイメージしています」(DiamondBarさん) 最近は、地震や津波をシミュレーションした内容やその映像の精度が飛躍的に進歩しています。首都圏を襲う直下型地震や南海・東南海を震源とする大地震などは、いつか必ずやってきます。もう秒読み段階かもしれません。 「災害発生メカニズムについて分かりやすく、根気強く報道する」(黒船さん) 大きな災害のたびに「こんなことが起こるなんて…」というのが常です。むしろ予想しないことが起こるからこそ大きな被害につながるという面があるのではないかと感じています。 そういうときにどのようなメカニズムで災害が起きたのかということを想像できるということは、冷静に正しい行動ができるかどうかを分ける最も大きな要因になります。 「全国報道ができることは、被災者の具体的な個人の物語を通じて感情移入を促し、共感を醸成すること」(Michelle Sunnyさん) 「絶望的な現実を突きつけられた人たちの心情と、そこからわずかであっても希望を持つまでの経過を伝えてこそ、多くの人の心に残ると思います」(blueberry53さん) この二つのご意見は、わたしが考えているメディアの本質と非常に近いと思います。 被災者にマイクを向けることに対して、批判的な意見が多くあることは、わたしを含めてメディアに携わったことがある人なら誰でも理解しています。傷ついている被災者をさらに傷つけるようなことは、決して許されるものではありません。 それでもメディアは、自分たちが発信した内容によって、少しでも情報の受け手が自分のこととして感じ、真剣に防災を考える一助になり、その思いこそがよりよい社会につながるのではと日々悩み、必死になって考えながら被災地で取材活動にあたっています。 最初に触れた娘さん2人を亡くされたお父さんのインタビューは、今回の災害の酷い実態や被災者のやり場のない辛い気持ちが、これ以上ないほど伝わってきました。わたしはまるで自分に起きたことのように感じ、そして様々なことを考えました。おそらく多くの人が、わたしと同じだったのではないでしょうか。 以前にも触れましたが、人間の「記憶」は「感情」と大きな関係があります。酷い実態やそこから得る教訓を広く社会に定着させ、次の災害に備えるためには、どうしても情報の受け手の感情を動かし、出来事を社会全体に広く記憶させ、様々な議論を呼び起こし、そこから得られる教訓をきちんと定着させることが必要になるのです。 感情的な、扇情的な伝え方に拒否反応を示すかたも大勢います。議論が平行線をたどることもよくあります。 すべてにおいて感情を優先させるわけにはいきませんし、情報の受け手があってはじめてメディア側の情報発信があるわけですから、すべての人々が事実を淡々と伝えて欲しいということになれば、そうするしかないのかもしれません。 ここまでの議論をお読みいただければ、メディア側がよりよい社会を目指して、その役割を果たそうとしていること、そしてそのために受け手の感情を動かそうと真摯に取り組み、軋轢を生まぬように様々な努力をしていることも、少しはご理解いただけたのではないか、そしてご理解いただければよいなと願っています。 能登半島地震はまだ大勢の不明者がいます。避難所で多くの人が不安な日々を過ごしています。復旧や復興への長い道のりは、まだ始まっていません。 これからも様々な報道を通して、今回の災害と被災者に関心を持ち続けていただければと思います。被災者のことを思うことは支援です。そしてそれは次の災害への備えです。 簡単には答えの見つからない、難しいテーマに一週間お付き合いいただき、心から感謝申し上げます。またお会いできる日があることを願っております。その際は、何卒よろしくお願いいたします。★織田議長の過去の円卓会議より・被害者の実名報道。必要ですか?・藤井聡太さん、活躍。将棋への関心は高まりましたか?
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