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会議番号:3231 開催期間 2013年04月26日- 05月03日
一週間、議論につき合って頂きありがとう。このシリーズは「TPP参加、成果は期待できると思いますか」でしたね。皆さんは何を「成果」と考えていますか? 日本政府がどんな目標を定めているか、ご存じですか? その目標はあなたと共有できますか? 「日本は貿易立国だから自由な貿易体制を進めるのは日本にいいことだ。細かいことはよく分からないけど参加すればきっといいことがある」という声をよく聞きます。 「アジアは成長が期待できる。自由な経済圏を作ることは日本にとって好ましい」という意見もあります。その通りかも知れませんが、自由な貿易体制とか自由な経済圏とかは分かったようで分からない。TPP交渉は具体的項目を巡る攻防です。日本は何を勝ち取ろうとしているのか。 「専門家じゃないから分からない」と多くの人は思うでしょう。「分からない」のではなく「知らされていない」からです。 「農産品5項目と国民皆保険は守る」と安倍首相は言いました。でもTPPは「守る交渉」だけではない。「取りに行く交渉」があるから参加するんですよね。 私が気掛かりなのは「TPPでどんな成果を目標として掲げているのか明かではない」ということです。「目標が国民に共有されていない」「理解されていない」「議論されていない」ということです。 前回も指摘しましたが米国は極めて具体的に目標項目を定めています。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなども戦略目標は明かです。日本はどうでしょう。 「農林水産業の生産額はGDP全体の1.5%しかない。この1.5%の利益を守るため、他の98.5%を犠牲にすることはできない」民主党政権時代、前原誠二外相はそう述べ農業が犠牲になってもTPPに参加すべきだ、と主張しました。物議を醸した発言でしたがひとつの考えです。ただ前原さんは、農業を犠牲にして何を得たいのか明らかにしなかった。 その前原さんが3月の予算委員会で質問に立ち、「民主党政権はTPP交渉への参加表明をしたかったが出来なかった。米国の要求があまりにも身勝手だったからだ」と自動車や保険を巡る秘密交渉を暴露し、「事前交渉で武装解除を求める米国の身勝手な言い分をのんで、まさか交渉参加なんてしないでしょうね」と安倍首相に迫った。 前原さんは農業で譲っても自動車など強い品目で成果をとるのがTPPに参加するメリット、と考えていたのだと思います。 多くの投稿者が指摘するように、国際交渉は自国の都合だけでは進まない。「何を譲って、何を取るか」を決めるのが政治です。 日本の自動車メーカーが米国に払っている関税は年間800億円あります。本来なら「取りに行く」交渉項目です。なぜ諦めるのか。諦めてよかったのか。損失はカナダやオーストラリアにも波及するでしょう。TPPに参加する利点は大幅に減ってしまいました。 こうなったのは米国の自動車業界が議会や政府に働きかけた成果です。米国には「TPP推進米国企業連合」という組織があり、航空機のボーイング、宅配便のフェデックス、農産品のモンサント、金融ではシティーグループや生命保険会社協議会などの多国籍企業が参加し、圧力団体になっています。 米政府が掲げる目標が明快なのは多国籍企業の要望をストレートに反映しているからともいえます。 TPPは知的所有権の保護、非関税障壁の撤廃、自由な投資や会社の設立、政府調達の外資への開放など、多国籍企業が海外で自由に活動できる条件を整備することに狙いがあります。その点、国際展開する日本の大企業にも共通の利益がある。なら米国の後を付いていけばいいのか。 TPPはどの国が得して、どの国が損する、というより、どの国のどんな企業が有利になり、どの国のどんな産業が犠牲を強いられるか。それが国民経済全体にどんな影響を及ぼすのか。ここがポイントです。真剣に吟味する必要があります。 そのためには情報が公開され、隠し事のない率直な議論が必要でしょう。TPPをどうするかは民主主義の生きた教材だと私は思いますが、いかがでしょう。★こちらもご覧ください〜山田議長の過去の円卓会議より・TPP協議に参加することに、賛成ですか反対ですか?(2011.10月)・沖縄問題。あなたの考え、まとまっていますか?
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