イー・ウーマン（ewoman）

何をハラールとするか（kyoko004・神奈川県・41）

一緒に食事をする場面で、同じイスラム教徒でも国によって、また同じ国でも人によって食事などについての考え方が違うとは思っていました。が、議長の人間の行為5分類で、何をハラールとするかという考えに違いがあるという説明で、疑問が解けました。何をハラールとしているか、そこに生まれる会話も楽しいですね。

イスラム教徒とひとくくりには（HARUMA・福岡県・55）

イスラム教徒は戒律を遵守するというイメージがありましたが、実際には意外と多様でした。子どもの保育園は留学生が多かったのですが、帰国する少し前までヒジャブなしで、子どもの食事については「子どもは良いのよ」と豚肉の給食も豚肉そのものさえ取り除けばOKの家庭もありました。一方で、ヒマールをずっとかぶっておられ、子どもの給食もラードもダメ、調理器具も別にして欲しいという家庭もあり、保育園の給食の方は別途調理器具を用意し、特別メニューを作っておられました。

尊重から始まる理解（真打ち・栃木県・48）

文化史ジャーナリストの記事の中で「これから行こうとしている国を、全く調べもせず知ろうともしないのでは、現地の人達を軽く見ているのと同じ」とあり、これは国や宗派を問わず言える事だと痛感。特に印象的なのは、人道支援を受ける場合、近年はイスラム法学者が一時的に判断を下し、禁忌食材も食べて良しと出来る「緩和策」の存在だ。決して教えに背くことではなく、生命維持を第一に考えた判断だと、私は思う。

考え方に接する機会を（かすが・神奈川県・53）

日本人にはイスラム教を信仰している人が少なく、なかなかハラールを理解する機会がないと私は思います。とあるオフ会でイスラム教信仰者に逢う機会があり、根掘り葉掘り聞きましたが、彼らも理解してもらいたいということもあり、嫌がらずに話してくれました。最近ではハラールフード販売店なども多くなってきており、こうした場所ではハラールを理解している人が多数出入りします。最初は興味でよいと思いますが、相互理解のために、一度話してみることが良いのではないかと思います。

地域差は？④の「忌避」とは？（レッズ・埼玉県・37）

2点質問があります。まず、イスラム教徒が暮らす地域はアジア、中東、アフリカ、ヨーロッパなど広大ですが、地域によってハラールの考え方に差はあるのでしょうか？知っておいた方が良いことがあれば教えてください。また、④「忌避」はハラールではないという考えもあるとのことですが、④「忌避」の行為とは具体的にどの様なことでしょうか？⑤の「禁止」の行為は理解しましたので、④「忌避」についても知っておきたいです。ご教示よろしくお願いします。

郷に入っては郷に従えも重要（tulip・海外・その他・46）

中東からの学生に囲まれて仕事をしていますが、アメリカの文化に柔軟に対応している人が多いように思います。戒律をどれくらい守るかは、その人の出身地や同行している家族の状況によっても異なります。大都市出身の人は自由な傾向が強く、小さな地方都市出身の人は細かい戒律を守ります。また、戒律に厳しい父親や兄が同行している若者は自由があまりないように見えます。

ホームパーティーでの料理（えこりん・神奈川県・42）

豚肉とアルコールがNG位の知識しかありませんでした。イスラム教徒としてやってはいけない事とはどんな事か知りたいです。日本在住のインドネシアの友人を招いた時に食事のメニューに気を遣いました。ベーコン、ソーセージ、ハム、ミートボールなど、豚肉の加工品を普段無意識に多く使っていたことを認識しました。

どこまで許されるのかの線引（黒船・神奈川県・50）

昨年来大人数の国際プロジェクトを実施しています。食事は肉数種類と野菜など多くのメニューを用意しているのですが、厳密なハラール食を提供することは出来ないことを、ムスリムの方には事前にお伝えし、特別食の準備を心配していました。結局通常の調理方法の魚料理や野菜を召し上がりました。近隣に礼拝場が無く､金曜日礼拝も心配していましたが、毎週では無く2〜3週に一度の礼拝。調べたり聞いていたことと違ったので、線引きは何処なのかよく分からなくなりました。

理解はしたいけれど（SallyChan・東京都・47）

近所にハラール認証を受けているラーメン屋さんがあります。ワゴン車でツアー客が連れてこられているのもしばしばみかけます。そのお店には日本人のお客様はほぼ皆無で、イスラム教徒の人たちで店の前はあふれかえっています。向かいのビルや隣のハラールと関係ないお店の前に座り込んだりしていて、その通りはちょっと異様な雰囲気にみえます。そういったマナーの問題からも近隣の人の目はどうしても排他的になりますし、理解したくとも接点もなく悩ましい現状です。

（レッズ）さんから「忌避」の具体例の質問がありましたが、代表的なものは離婚、避妊、喫煙などです。ちなみに「義務」は礼拝や断食などであり、「推奨」は自発的喜捨、結婚などです。そしてたいていの行為は「許可」となります。「許可」を指してハラールということもあります。

ハラールの解釈は歴史的に蓄積されたものなので、地域差と人による解釈の差が当然生じます。きれいなリストは作れません。（tulip）さんの体験からも分かるように日本人は気にし過ぎない方がいいと思います。

戒律をめぐって目の前でイスラム教徒同士が異なった見解を述べる場面に出会ったことがあります。これは珍しいことではないのです。したがって（えこりん）さんが言っているような、食べ物で言えば豚肉とアルコールだけはイスラム教に勧めないといった程度の対処法でも、日本国内ではさほど問題ないかと思います。賭け事に誘わないというようなことも大事です。

ただイスラム圏を対象とする大きなビジネスとなれば、イスラム法に多少とも通じた人に相談する機会を設けたほうがいいでしょう。

イスラム教徒の解釈が揺れ動くように見えるもう一つの理由は、イスラム教徒が大事にしているのは神ということです。豚肉さえもそれを食べなければ死ぬというような場合は食べていい。神は人間が死ぬことを望んでいない、そういうふうに解釈するのです。

誰も見ていなくても礼拝を大事にするのも、神はちゃんと分かるという考えです。日本人は宗教習俗でも周囲の目を気にして行動したりします。簡単な葬儀でもいいと思っていても、それでは親族が納得しないから派手にするというような例です。

しかし、イスラム教徒にとって問題なのは神ですから、止むを得ず戒律を破っても、神はそれを許して下さるだろうと解釈すれば、通常守る戒律を破ることもあります。何がハラールかを考えるときも、この基本を押さえているとだいぶやりやすくなるはずです。

気になったら、食事でも作法でも、相手に聞くのが一番です。熱心なイスラム教徒は、自分の行為はいつも神に見られていると考えているということの理解が肝要です。ここに社会的約束としてのマナーとの違いという面があります。

こうした説明を受けた上で、「ハラール」について、さらに生じる疑問等がありましたらお寄せください。もしあなたの職場やコミュニティにイスラム教徒が居たら、と身近に想定して考えてみるのも良いかもしれません。





★井上議長の過去の円卓会議より
・イスラム教徒と話したこと、ありますか？
・イスラム教に悪いイメージを持っていますか？
・外国人観光客増加。多様な宗教の習慣、理解していますか？

• 2018.04.11
• 井上順孝 國學院大學名誉教授