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会議番号:3646 開催期間 2021年06月25日- 07月02日
みなさん、2回目のたくさんのご意見、ありがとうございます。 東京に4回目の緊急事態宣言発令が決定されました。生活に直結するレストラン、スーパー、そして商業施設の運用規定が、基本的対処方針で決まります。 緊急事態宣言を発出しつつも、オリンピック・パラリンピックを行うとなると、国内での感染者はある程度抑えられても、海外からの感染者の紛れ込みは一定程度起こると思います。競技会場や選手村、マスコミのpress centersでクラスターが発生しなければいいのですが・・・。 さて、今回は、いただいたコメントに対して、一つ一つお答えしていきたいと思います。 ◆副反応と、感染した場合の症状 こはくさんは、ワクチン接種後の副反応が怖いと、コメントされています。副反応の出現については、2020年3月に開催した「新型コロナウィルス感染症。自分の健康、心配ですか?」で、出現頻度を含め説明しました。ただ、誰に、どの程度の頻度で起こるのか、は、接種してみないとわかりません。そのため、怖いものは怖い、と思われるのは、率直なご意見だと思います。 副反応による接種部の痛みや全身倦怠感などは、接種後48時間程度で治まります。しかし、感染した場合には、軽症では一過性(1−2日程度)の熱ですが、中等症になると、発熱とともに、咳、喀痰、多呼吸などの呼吸症状の増悪が数日〜1週間程度持続しますし、重症となると、発熱に加え発症後1週間目から呼吸困難が強くなります。 ワクチン接種直後に感染し軽症で発症すると、ワクチン接種後の副反応と鑑別が非常に難しいと思います。そのため、最終的には、PCR法での検査が必要になると思います。ただし、ワクチン接種後に感染するといった症例は珍しいと思います。そのため、この気象予報士の方のお話は、特別な状況での出来事として考えていただいた方が良いかと思います。 最近は、ワクチン1回目接種後に新型コロナウイルスに感染した、という方も報告されております。やはり、2回接種しないと、十分量の予防抗体はつくられません。 ◆持病やアレルギーがあることの不安 やっちゃん24さんは、基礎疾患の影響と副反応を心配されています。ワクチン接種時には、接種当日の体調、過去の食物・薬品へのアレルギーやアナフィラキシーの既往、過去のワクチン接種での体調不良、抗凝固薬内服、などを確認します。そのため、アレルギー体質、となると、接種後の副反応出現率が高くなる可能性があります。 自分の施設や大規模接種会場で問診医をやっていますが、副反応の可能性が高いと判断すれば、接種後特別なブースに移動していただき、通常より長めの時間で経過観察します。ここには、アナフィラキシー出現時に対応できる薬品の準備や、救急車の手配、ER医師との連携があります。接種するかは、本人の判断なので、おそらく主治医の先生も、自分で判断されてください、と説明されたのだと思います。 また、仮にご自身がワクチン接種した場合に、感染源にならないか、と心配されています。これは、ワクチン接種によって、自分が感染源になる可能性がある、と考えられているのでしょうか? 例えば、水痘ワクチンやおたふくワクチンであれば、生きたウイルスをワクチン製剤に使用するので、接種者が、免疫抑制剤を使っていると、免疫抑制が強い場合に接種したワクチンウイルスが体内で増殖し、その感染症を発症します。私も臓器移植後で免疫抑制薬を使用している方に水痘ワクチンを接種し、2週間後に水痘を発症した症例を経験しました。今回の新型コロナワクチンは、mRNAワクチンなので生ワクチンとは異なります。接種しても、体内で新型コロナウイルスが増殖し発症することはありません。 また、ワクチンは接種しても、すぐ抗体が作られるわけでありません。2回目接種してから、最低でも2週間程度は必要です。そのため、2回目のワクチン接種後、2週間程度はワクチン接種していない状況と同じであり、感染には注意しなければなりません。 医療技術が発展していく場合、今は良くても将来的には?という疑問が常にあります。2000年初めに、気管支喘息の予防薬として、ステロイド吸入薬が登場しました。予防効果は抜群でしたが、ステロイド吸入を何年もやって、将来的に成長障害やホルモン異常は大丈夫なのか?といった質問が多くありました。その時は、今の段階では大丈夫です、としか言えませんでしたが、現在は20年経ちますが、こちらは大丈夫なようです。 このように、登場間もない薬品や医療技術は、将来的な安全性に疑問がでるのは当然です。前回お話しましたが、人間の身体は、理屈だけで判断できるほど簡単でもありません。そのため、Hei723さんのように、不安なお気持ちを持つのは当然です。 また、6月23日に、CDCから、若年層にmRNAワクチンを使用した場合、心筋炎の発症頻度が多い。関連性を調査中と報告されました。 Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination | CDC Selected Adverse Events Reported after COVID-19 Vaccination | CDC 現在、調査が進められていますが、他の年齢層に比べると予想される副反応の出現頻度が高い、ということです。今後、国内で若年層にワクチン接種が行われるようになった場合には、注視していく必要があります。 ◆日本におけるPCR検査について PCR法についてのご意見もありました。PCR法は、プライマーセットや酵素、温度設定などたくさんのstepsがありますが、実験系の操作マニュアルは世界的に統一されているので、問題ないと思いますが、Hei723さんが間違えている可能性、と指摘しているのは、おそらく、検査対象者の選定についてだと思います。 PCR検査の実施については、新型コロナウイルスが出現してから、色々な議論がありました。県や市、村の保健所が整備され国民皆保険が充実している日本では、発生時に、Hot spotsを抑え込むクラスター対策を取りました。一方で、アメリカや韓国など多くの諸外国は、症状があるヒト、検査を希望するヒトを対象に網羅的に検査を行ってきました。どちらも利点と欠点はあります。 ただ、日本の場合には、保健システムがしっかりしていて行政サービスが細やかなのと、検査を行う上で一定の基準を設けること、などから、PCR検査は、クラスター対策とする、という方針を取りました。 そのため、アメリカや韓国などの検査体制がベスト、と考える方には、日本は、検査数が足りない、後手後手に回っている、など、意見があるかと思います。費用も時間も人員も多ければ、両者を合わせればいいのですが・・・。日本の実情と科学的根拠、そして政治判断で決定されたものです。 日々の外来(小児科ですが)でも、熱はないけど心配だからインフルエンザ検査希望、や保育園でノロが流行しているから症状ないけど検査希望、という外来相談を受けます。日本で、希望者全員に検査可能となった場合、我先にと諸外国以上に安心を求める方が殺到し検査体制が崩壊する、といった懸念もあったのでは?と思います。(これは私の考えです) ◆「陽性者」と「感染者」について 陽性者と感染者などについては、言葉の定義です。 陽性者も感染者も、ウイルスに感染しています。その中で、発症すれば、感染者=発症者になり、検査で陽性者、となります。陽性者でも、症状がでない感染者は、不顕性感染者です。体内に免疫がある場合には感染しても発症しません。この場合の感染という表現には、注意が必要です。ウイルスが咽頭などの細胞に付着し、瞬間的には感染が成立しますが、血液中の免疫(リンパ球)や抗体(一般的にはIgG抗体)により、すみやかに、感染細胞は攻撃され消失します。そのため、あくまで一時的に感染しますが、免疫によってウイルスは体内から速やかに消失します。そのため結果的に発症はしません。そして、検査では陰性者になります。 まとめますと、ウイルスが体内にはいると、まず感染は成立しますが、次の瞬間、抗体がある方は、速やかにウイルスは消失していき、ない方は、ウイルス増殖が進み発症していきます。 ◆情報を客観的に捉え、主観的に判断する ワクチン接種は、メリットとデメリットを両天秤にかけ、そのバランスで考えていただくことが良いかと思います。この天秤にのせるfactorsは、ヒトそれぞれで、考え方もそれぞれです。接種の強要や不完全な情報に流されて、ということではなく、レッズさんのように、自分はどう考えるか、で、接種をご判断いただくことが大切です。 医療では、100%はありえません。ないものをない、と断定することは、現代の医学ではできません。これを、悪魔の証明と言います。なので、より安全なのか、より安心なのか、という認識が重要です。以前、入院患者の緊急治療で血液製剤を使用する際に、患者さんの保護者から、「100万人に1人の副作用といわれても、自分にとっては出るか出ないか、です」と言われました。Tohkoさんのように、客観的に物事を捉えて、自分の場合だったら、として、主観的に判断することは、重要なことです。 ワクチンの議論では、私の職歴(CDC、厚労省健康局)から、一部の方は、田村がワクチン推進派であり、積極的にpositive dataを用いて議論している、と思われるかもしれません。もちろん、WHOやCDCの考えを理解し、臨床現場で応用しておりますが、ワクチン接種を受けるか、受けないかは、みなさん、各個人の判断です。 今回、使用している論文データは、客観性が高く、論文掲載時に査読者がいること、かつ信憑性の高いデータを用いるようにしております。「田村先生のご説明が信頼できることに安心しました」という、いーちゃんさんのようなコメントをいただくと、非常にありがたく思います。 今回のコメントも、みなさんからのご意見、質問を、なるべく客観的に答えたところ、長文になってしまいました。 新型コロナワクチン、不安なことありますか? 最終回に向けて引き続き、みなさんからのコメントや疑問、お待ちしております。★イー・ウーマン編集担当より このテーマは、6/25(金)より1ヶ月間開催しています。次回更新の7/19(月)(会議4日目)が最終日です。 ★田村議長の過去の円卓会議より・コロナとインフルエンザ。対策、できていますか?(2020年11月)・新型コロナウィルス感染症。自分の健康、心配ですか?(2020年3月)・中国の新型肺炎。気になりますか?(2020年1月)
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