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会議番号:3394 開催期間 2016年06月03日- 06月10日
「綸言汗のごとし」という言葉があります。君主が一度口にした言葉は、流れ出た汗を元に戻すことができないように、取り消すことはできない、という意味です。消費税の引き上げ時期を2年半延期することを表明した安倍首相の会見を聞きながら、この言葉を思い出しました。 首相は2014年11月に、8%から10%への消費増税の時期を2015年10月から2017年4月に延期することを表明したときに、次のように述べました。 「来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言します」 そして、この後の国会論議などでは、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り」という言い方で、消費税の引き上げを必ず実施すると述べてきたのです。 延期の理由は、アベノミクスは成果を上げているものの、中国など新興国経済に陰りが見え、世界経済が成長のエンジンを失いかねないリスクがあるから、というものです。伊勢志摩サミットでも、新たな危機を回避するため、適時にすべての政策対応をすることで合意しているのだから、「増税の延期は、G7議長国としての責任である」とも説明しました。 これまでの言を翻したわけですから、「公約違反との批判は真摯に受け止める」と、首相はそれを認めたうえで、「約束と異なる判断を行うのであれば、国民の審判をあおいでから実行すべきだ」として、7月の参院選挙を、その審判をあおぐ機会にすると言明しました。 レトリックとしては、よくできていると思います。しかし、「アベノミクスは成果をあげているが、中国など新興国経済に陰りが起きている」という事実認識については、アベノミクス失敗の責任を他国に転嫁しているとの批判が野党などから出ているのは当然でしょう。 首相は「税こそ民主主義」だとして、参院選で国民の信を問うと、参院選の争点を増税延期の是非だと自ら設定していましたが、野党の多くも増税延期を求めているのですから、増税の是非は選挙の争点にはなりません。野党からすれば、参院選の争点は、首相が公約を破ったことの是非であって、増税延期は論理のすり替えということになるでしょう。 安倍首相が首相として戦う国政選挙は、2013年7月の参院選、2014年12月の衆院選に続き、今回の参院選で3度目ということになります。そのうちの2度の選挙は税制にからめていますから、「税こそ民主主義」という信念に偽りはないのだと思います。しかし、財政再建という日本にとっての大きな課題について、2度とも増税ではなく、増税の延期だということをみると、信念の首相は臆病でもあるのかなと思います。 なにせ、増税を口にしたり、実行したりした内閣のほとんどは、国民の批判にさらされ、時には内閣そのものが倒れているからです。直近でいえば、増税なき財政再建を掲げて政権に就いた民主党政権の菅首相が消費増税を口にしたため、6年前の参院選で大敗、与野党逆転のねじれ国会となり、政権の命脈を縮めました。税で国民の信を問う、というのは、国民に負担を強いる増税のときにこそ使う言葉のようにも思えます。 消費税の引き上げ延期をめぐって、私たち国民は「信」を問われたわけです。「消費増税延期。安倍総理、信頼できますか?」 このテーマで1週間議論をしてみましょう。みなさんの率直な意見をお寄せください。★高成田議長の過去の円卓会議より・原発差し止め、支持しますか?・中国と台湾の握手。これからの日中台の関係、気になりますか?・東日本大震災から4年。風化したのでしょうか?(2015年3月実施)
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