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会議番号:3727 開催期間 2023年10月20日- 10月27日
イスラエルのガザへの地上侵攻はいまのところ始まっていませんが、空爆によるガザ市民の犠牲はこれまでにない規模になっています。人質の解放もなかなか進みません。国連安保理の拒否権の応酬による混迷ぶりを見ていると、人々の生命があまりにもないがしろにされていることに愕然とします。 私たちの中東への理解を深めるには、どうしたらよいのか。「宗教と歴史を知る」(DiamondBarさん)のが基本ですね。今回のイスラエル市民を対象にしたハマスの攻撃について、イスラエルは、ナチスによるホロコースト以来の暴挙だと非難していますが、ハマスは、積年のパレスチナ人民の抑圧に対する抵抗だと主張します。 パレスチナ難民が生まれたのは、1948年のイスラエル建国で、そこに住んでいた人々が追い出されたからです。75年に及ぶ長い歴史ですが、ユダヤ人は古代ローマ時代からのユダヤ人への差別と虐待の2000年に及ぶさらに歴史を語ります。お互いに共通するのは、自分たちこそ被害者という認識かもしれません。お互いに地球市民であることを理解すれば、「気候危機など全人類に迫った共通の敵に取り組むことが解決の糸口になるかもしれません」(黒船さん)。 中東に限りませんが、複雑な問題を理解するには、「メディアの役割が重要」(blueberry53さん)です。とくに、SNSの普及でフェイクニュースが流れやすくなった時代には、お互いの主張を伝えるだけでなく、事実の検証がメディアの役割として不可欠になっています。 ニューヨークタイムズ紙は、ガザの病院での爆発を生じさせたミサイルの複数の映像を入手して三角測量の方法で分析し、イスラエルが公表した「ハマスのミサイル」説に疑問を提示し、爆発とほぼ同時刻にイスラエル側からミサイルが発射されたことを報じました。フェイクニュースが多発する戦時下では、SNSなどに流れた映像や記事がフェイクかどうかを調べるのはメディアの責務だと思います。 海外からの石油に依存する日本は、1970年代の石油危機をきっかけに、中東諸国との関係を重視し、「油乞い外交」と揶揄された時期もありました。日本は米国との同盟関係を強化するなかで、次第に中東諸国と距離を置くようになった印象がありますが、日本がイランなどとの外交のパイプが今もあるのは、その時代の遺産です。「産油国と良好な信頼がないと争奪戦に負けてしまう」(しょこさん)という構図が基本的に変わっていないのなら、あらためて中東諸国との信頼醸成に力を入れるのが日本のエネルギーを含めた安全保障につながりますし、中東における紛争解決に日本が役立つことにもなるはずです。 安保理の投票で、日本は米国に同調していません。これも、石油を中東に依存する日本の思惑があるのかもしれません。「中東問題を、私事として捉える動機は多々あるが、経済の前に生命の維持が大前提ではないか」(真打ちさん)として、イスラエルの自衛権支持の輪に日本が加わっていないことに疑問を投げかけています。今回の戦争は、ハマスの「テロ」がきっかけですから、イスラエルの反撃は「自衛権の行使」ということになります。 私は、パレスチナ問題を考える時に、パレスチナ側の暴力的な行動はいつも「テロ」であり、イスラエル側の行動はたとえ過剰な暴力であっても「正当な自衛権の発動」になるという「構造的な非対称性」があると思っています。この言葉は、立山良司防衛大学名誉教授が日本記者クラブの会見(2023年9月6日)で説明していたもので、構造的と言うのは、占領国と被占領者という動かしがたい関係性だと思います。吉本隆明(『マチウ書試論』などの思想家)なら「関係の絶対性」と言うでしょう。 「被占領者」なら「占領国」に対するどんな抵抗も許されるということではありません。しかし、この構造をなくさない限り、「テロ」も「正当な自衛権の発動」も終わらないと思います。この構造をなくすには、オスロ合意がめざした自立したパレスチナ国家とイスラエルとの共存を実現するしかないと思います。「イスラエル建国以前のように、多民族が仲良く豊かに暮らせる地域」(黒船さん)の再現です。 オスロ合意の道がぼやけるにつれて、パレスチナ側にはハマス、イスラエル側には極右勢力など、二つの国家の併存を認めない人たちが次第に力を増しています。機能不全の安保理が今の戦争をやめさせることで、息を吹き返し、機能を回復してほしいと思います。 パレスチナの難民救済、そしてガザで人々の命を救おうとする医療に従事している人たちがたくさんいます。そのなかには、日本人もいます。この人たちの無事も祈りたいと思います。 一週間、真摯な議論に参加いただいたみなさんに感謝します。
★高成田議長の過去の円卓会議より
・ウクライナ侵攻から1年、あなたにできることありますか?(2023年2月)
・中国・習氏続投。脅威ですか?(2022年10月)
・「次世代型原発」新設へ。賛成ですか?(2022年8月)
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